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組織開発

組織変革を小さく試すには|一部署の改善を全社へ広げる判断基準

執筆・監修:森田英一 公開: 更新:
組織を変えるの記事サムネイル。森田英一の人物写真と「いきなり全社は、難しい」の文字。

この記事の結論

組織変革を小さく試すときは、実施する部署を絞るだけでは不十分です。何を変えるか、何を観察するか、どの条件で止めるか、何が確かめられたら広げるかを先に決める。良い結果を出すためだけでなく、自社で機能する条件を学ぶための試行にすることで、一部署の改善を他の現場へ渡しやすくなります。

結論

組織変革を小さく試すときは、実施する部署を絞るだけでは不十分です。何を変えるか、何を観察するか、どの条件で止めるか、何が確かめられたら広げるかを先に決める。良い結果を出すためだけでなく、自社で機能する条件を学ぶための試行にすることで、一部署の改善を他の現場へ渡しやすくなります。

小さく始めたのに、広げる判断ができない

ある部署で会議の進め方を変え、参加者から良かったという反応が出た。そこで全社へ導入しようとしたが、何が良かったのか、他部署でも同じ方法が使えるのかを説明できない。

小さく試すことと、小さな成功を宣伝することは同じではありません。試行の目的が曖昧なままだと、好意的な感想を集めるだけになったり、実施した責任者の熱意に依存したりします。

森田英一の既存解説では、モデル部署で小さく始め、変化とその価値を語り、再現できる形にして横展開する考え方が示されています。本稿では、試行を設計して広げるかどうかを決める方法を編集提案として整理します。

最初の実験で、何を知りたいかを決める

改善したいことを一つ選び、今の状態と試す変更を並べます。会議を短くしたいだけでなく、報告に時間を使いすぎて意思決定が残る状態を変えたい、といった形です。

そのうえで、変更によって何が起きると考えているかを書きます。報告資料を事前共有すれば、会議では未決事項の検討に時間を使えるのではないか。このように、やることと期待する変化のつながりを仮説として置きます。

ここで示した会議の変更は仮例であり、特定企業での成果を報告するものではありません。実際には、資料を読む時間を別に確保できなければ、会議の負担を前へ移すだけかもしれません。その可能性も含めて確かめます。

試す範囲は、責任と影響で区切る

一部署の中でも、顧客への約束や他部署の業務に影響する変更があります。小さく試すという理由で、必要な承認や安全上の確認を省略してはいけません。

対象の業務、参加者、試す期間、変更してよい範囲を明確にします。何を変えずに維持するかも決めてください。複数の仕組みを同時に変えると、何が役立ち、何が負担になったかを見分けにくくなります。

試行の責任者は、開始を促すだけでなく、問題が出たときに止め、元へ戻す判断も担います。現場の提案で始める場合でも、必要な支援者と判断権限を確認しておきます。

観察するものを、実施前に揃える

変えたい行動を見る

会議の仮例なら、報告資料を配ったかだけでなく、参加者が必要な情報を読めたか、未決事項が議題になったか、判断に必要な人が参加したかを見ます。

実施したという事実と、期待した行動が起きたことは分けます。新しい様式を使っただけで改善したと判断しないようにします。

業務の結果を見る

決まった内容が実行へつながったか、持ち越した論点は何か、判断後の手戻りがどうだったかを確かめます。時間や件数を使う場合は、試行前と同じ定義で記録してください。

一方、短い試行で会社全体の業績まで変わることを求めると、近い変化が見えにくくなります。今回確認できる範囲と、長く見なければ分からない結果を分けます。

別の場所に増えた負担を見る

会議が短くなっても、資料作成や事前確認の負担が増える場合があります。主催者だけでなく、参加者や後工程の担当者にも聞きます。

改善した部署の数字だけを見ないことが大切です。どこかの負担を外へ移しただけなら、全社へ広げる前に設計を直す必要があります。

中止条件は、失敗を責めるためではない

開始前に、どんな状態なら一時停止や変更をするかを決めます。顧客への約束に支障が出る、安全上の懸念が生じる、通常業務への負担が合意した範囲を超える、といった観点です。

具体的な条件は、業務の責任者と決めてください。何となく大変になったら考える、では、進める人と止めたい人の間で解釈が割れます。

止めた場合は、何が観察され、どの仮説が成り立たなかったかを残します。計画どおりに続けたことだけを評価すると、問題を隠す方が得になる可能性があります。中止も、次の設計を判断する材料として扱います。

横展開の前に、四つを確かめる

一つ目は、どんな変化が起きたかを説明できることです。参加者の感想だけでなく、実際の行動や業務の変化を示します。変化が小さくても、何を学べたかが明確なら次の試行に使えます。

二つ目は、その変化が起きる条件を説明できることです。責任者の支援、参加者の経験、必要な時間、使用した情報など、何が揃っていたかを確認します。特定の人が無理をして成り立っていないかも見ます。

三つ目は、次の部署で確保できる条件を確認することです。業務量や権限が違うなら、そのまま持ち込まず調整します。一部署で機能したことだけで、全社でも同じ効果が出るとはいえません。

四つ目は、続ける担当者と見直し方が決まっていることです。導入した後の運営が曖昧なまま、説明資料だけ配って終わらせないようにします。

渡すのは手順だけでなく、変えなかった理由

横展開用の資料には、実施手順に加え、狙い、必要条件、うまくいかなかった部分、調整してよい部分を残します。成功した形だけを切り取ると、次の部署が同じ試行錯誤を繰り返すことになります。

どこは共通に守り、どこは現場に合わせて変えてよいかも明示します。会議の仮例なら、未決事項と決定責任者を明確にする点は共通にし、資料の形式や会議の頻度は業務に合わせる、といった分け方が考えられます。

必要なら、次の一部署で再度試します。全社導入を急がないことは、変革に消極的であることとは限りません。条件を確かめながら広げる方がよいか、経営の目的と現場の負担を踏まえて判断します。

よくある質問

どの部署から始めればよいですか。

困り事が具体的で、責任者と担当者が試行に関われる部署を検討します。成果が出やすそうという理由だけでなく、必要な権限と時間が確保できるかも確認します。

期間はどれくらい必要ですか。

一律には決められません。対象の業務が一巡し、変更した行動と影響を確認できる期間を考えます。繁忙期など条件が偏る場合は、その限界も記録します。

数字が改善しなければ失敗ですか。

期待した変化が起きなかった理由を確かめることも学びです。ただし、学びがあったという言葉だけで続けず、継続、修正、中止のどれを選ぶかを判断します。

まとめ

小さく試す価値は、大きな変革を小分けにすることだけではありません。自社で何が機能し、何が必要かを、影響を確かめながら学べることにあります。

最初の試行を始める前に、広げる条件と止める条件を書いてください。良い結果を願う計画から、次の判断に使える実験へ変わります。

森田英一

この記事の執筆・監修

森田 英一(もりっしー)

beyond globalグループ President & CEO/組織開発コンサルタント

約30年、国内外1,000社以上の組織開発・研修を支援。日本・シンガポール・タイの3拠点で、日系企業の組織変革と次世代リーダー育成に携わる。日本の人事部「HRアワード2013」教育・研修部門 最優秀賞。

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