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自走型組織

指示待ちを減らす業務設計|自分で決められる範囲をチームで揃える

執筆・監修:森田英一 公開: 更新:
自走する組織の記事サムネイル。森田英一の人物写真と「どこまで決めていい?」の文字。

この記事の結論

指示待ちを減らすには、社員へ考えるよう求める前に、何を自分で決められるかを揃える必要があります。同じ業務を上司と担当者が別々に仕分け、認識の違いを比べる。違いの背景にある権限・情報・経験の不足を確認し、相談が必要な条件まで合意することで、本人が判断するための足場をつくります。

結論

指示待ちを減らすには、社員へ考えるよう求める前に、何を自分で決められるかを揃える必要があります。同じ業務を上司と担当者が別々に仕分け、認識の違いを比べる。違いの背景にある権限・情報・経験の不足を確認し、相談が必要な条件まで合意することで、本人が判断するための足場をつくります。

「自分で考えて」が、仕事を止めることもある

担当者から相談されるたびに、上司が答えを返している。この状態を変えようとして、考えてから持ってくるように伝えた。それでも相談の内容が変わらないときは、意欲の問題と決める前に、業務の渡し方を確認したいところです。

本人に案がないのか、案はあるが決める権限がないのか。必要な情報を持っていないのか、前に自分で決めて差し戻されたのか。同じ相談でも、起きていることは異なります。すべてに同じ問いを返すだけでは、判断に必要な条件が埋まらないことがあります。

森田英一の既存解説では、指示待ちを上司との関わりや構造から捉え直し、目的を共有しながら本人が考えて決める対話を重視しています。本稿はその考え方を踏まえ、業務ごとの判断範囲を照合する実務の方法を編集提案として扱います。

まず、一つの業務を判断の場面に分ける

「顧客対応を任せる」「資料作成を任せる」では、範囲が広すぎます。顧客の質問に答える、追加要望を受ける、納期を約束する、費用を変更する。こうして判断の場面まで分けると、任せたつもりの部分と任せていない部分が見えてきます。

選ぶのは、すでに日常的に行っている業務で構いません。相談が頻繁に戻る業務を一つに絞り、その中で最近起きた判断を並べます。網羅的な職務一覧をつくる作業にしてしまうと、今の認識差にたどり着くまで時間がかかります。

記録には、業務名だけでなく、どの状況で何を決めるのかを書きます。同じ納期の回答でも、既定の範囲内なのか、別の担当者の仕事を動かすのかによって、必要な権限が変わるからです。

上司と担当者が、別々に仕分ける

最初から相談しながら分類すると、担当者が上司の答えに合わせる可能性があります。まずは同じ一覧を見て、それぞれが自分の理解を書きます。以下の三つは、本稿で提案する簡単な分類です。

一つ目は、自分で決めて進められるもの。二つ目は、案を用意したうえで相談して決めるもの。三つ目は、必要な情報を整理して、権限を持つ人の決定を待つものです。

どれに分けたかだけでなく、そう考えた理由を添えます。予算の範囲だから、他部門への影響があるから、顧客との約束に関わるから、といった理由です。分類が一致していても、理由が違えば条件が変わったときに判断が割れることがあります。

担当者が相談に分類し、上司が自分で決めるものに分類した項目があっても、正誤の採点はしません。その違いこそが、これまで確認が戻っていた理由を探る材料です。

認識の違いを、三種類の不足に分ける

権限が足りないのか

上司は任せたつもりでも、決裁規程では別の責任者の承認が必要かもしれません。他部門の納期や人員を動かす権限まで、直属上司だけで渡すこともできません。

この場合は、担当者の姿勢を変える前に、正式な権限と実際の業務を揃えます。必要な承認をなくすことが目的ではありません。誰が何を決めるのかを明確にし、担当者がどこまで準備して持ち込めばよいかを決めます。

情報が足りないのか

顧客の優先順位や過去の約束を、上司しか知らない場合があります。その情報なしに考えた案を後から修正しても、本人は何を学べばよいのか分かりません。

共有できる情報は、判断する前に見られる場所へ置きます。個別事情を広く共有できないなら、相談が必要になる条件を示します。情報がないまま推測させることと、考える力を育てることは別です。

経験が足りないのか

権限も情報もあるが、比較の仕方が分からない場合には、考える手順を支援します。何を守る判断か、選択肢は何か、各案にどんな影響があるかを一緒に確認してください。

経験が浅い段階では、任せる範囲を小さくし、途中で確認する方法もあります。大事なのは、いつまでも上司が答え続けるのではなく、何を確認できれば本人の判断へ移せるのかを明らかにすることです。

境界の仮例で、合意を確かめる

以下は実在企業の事例ではなく、合意内容を確かめるための仮例です。既存顧客への定型的な回答は担当者に任せる。一方、追加費用が発生する要望は相談する、と決めたとします。

では、費用は増えないが、別の顧客への対応が遅れる要望はどうでしょうか。金額だけを基準にしていたら、ここで判断が止まります。条件を少し変えた例を使うと、どこに相談が必要かが具体的になります。

合意する項目は、任せる判断、守る条件、判断に使う情報、相談する状況、相談先です。さらに、上司が不在の場合の連絡先と、返答までに進めてよい準備も確認します。これにより、相談が必要な案件でも仕事全体を止めずに済む余地を探せます。

担当者には、自分の言葉で範囲を説明してもらいます。上司も同じように説明し、認識が一致しているかを確かめます。担当者だけを理解度の試験にかけないことが重要です。

試した後は、相談の数より中身を見る

一定期間の運用後、どんな相談が残ったかを確認します。すでに合意した範囲の確認が続くなら、過去の差し戻しや不安が残っていないかを聞きます。新しい条件の相談が増えたなら、判断範囲が現実に即して具体化している可能性があります。

相談件数が減っただけでは、改善したとはいえません。必要な問題が上がらなくなっていないか、担当者が一人で抱え込んでいないかも見ます。任せる範囲を超えた相談は、主体性の不足ではなく、適切な判断として扱ってください。

振り返りでは、範囲を広げる項目と、支援を残す項目を分けます。人に一括して任せる・任せないを決めるのではなく、業務ごとに経験と条件を見て更新します。

よくある質問

仕分けをしても、本人が決めようとしない場合はどうしますか。

過去に判断を覆された経験や、失敗時の扱いへの不安がないかを確認します。書面で任せても、実際の上司の反応が変わらなければ、本人が慎重になる理由は残ります。

新人にも自分で考えさせるべきですか。

仕事の知識が必要な場面では、先に教えることが大切です。基本を知らない状態で判断を求めず、決められる小さな場面から、情報と支援をセットで渡します。

チーム全員に同じ権限を渡す必要がありますか。

一律に揃える必要はありません。ただし、役割や経験による違いと、その範囲を見直す条件は説明します。理由の分からない人別の扱いにならないようにしてください。

まとめ

指示待ちを減らす第一歩は、考えるよう促す言葉を増やすことだけではありません。本人が決められる範囲と、上司が任せたつもりの範囲を重ね合わせることです。

次の面談で、最近相談が戻ってきた業務を一つ選んでください。認識の違いを一緒に確認すれば、本人の努力に求める部分と、上司が整える部分を分けて考えられます。

森田英一

この記事の執筆・監修

森田 英一(もりっしー)

beyond globalグループ President & CEO/組織開発コンサルタント

約30年、国内外1,000社以上の組織開発・研修を支援。日本・シンガポール・タイの3拠点で、日系企業の組織変革と次世代リーダー育成に携わる。日本の人事部「HRアワード2013」教育・研修部門 最優秀賞。

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