「真面目に仕事をしているのに、なかなか評価されない」「優秀なはずなのに、上司から役職や決裁権を任せてもらえない」。承認されたい、評価されたいと願いながら、悩んでいるビジネスパーソンは少なくありません。同じように働いていても、上司からがっつり信頼される人と、便利な作業者として使われるだけの人がいます。
結論から言えば、この差は能力そのものではなく、上司の視点に立てているかという構造の問題です。今の仕事を黙々とこなすだけでは、便利な作業者として使われるだけで、決裁権や役職は降りてきません。本記事では、25年間で国内外1,000社以上と関わってきた森田英一が、上司から決裁権と役職を任せてもらう方法を解説した内容を整理します。
「上を目指す」ことがキャリアを守る前提
「今のままでいい」という人もいますが、今の時代はプレイヤーや作業者の仕事がAIに奪われていきます。だからこそ、管理職・マネジメント・経営のポジションを勝ち取るスキルを身につけておくことが、これからのキャリアにとって重要です。
マネジメント職の経験があれば、他社のマネジメント職にもつきやすく、将来独立する際にも役立ちます。つぶしが効くのです。今の仕事を頑張っているのに評価されずもんもんとしている人ほど、上を目指す価値があります。変化が激しい時代に下を見ていると、下りのエスカレーターに乗ったまま置いていかれます。
「今の仕事で満足」「上に行きたくない」という人もいますが、AIの進化で作業的な仕事の価値は下がっていきます。人をまとめ、判断し、成果を出すマネジメントの力は代替されにくく、キャリアの安全網になります。だからこそ、評価や役職を掴みに行くスキルを意識的に身につけておくことが、これからの時代を生き抜くうえで大切です。
森田氏自身、大学院を出てアクセンチャーに入社したため、大学の後輩が2年先輩という「マイナススタート」でした。悔しさから「できるだけ早く出世したい」と考え、戦略的に動いたそうです。上に上がることを本気で考える人は、意識的に動いています。
決裁権が任される仕組み
決裁権や役職は、今の仕事を黙々と頑張っていれば与えられるものではありません。黙々とやっているだけだと、都合のいい便利な作業者として使われるだけになります。ここが多くの人が見落としているポイントです。
鍵は、「この部下を上げた方が上司自身の評価も上がる」と思ってもらうことです。上司の仕事を構造的に軽くしたり楽にしたりできると、上司は便利屋扱いから「この部下を上げて活躍してもらおう」へと考えを変えます。
今の時代、プレイヤーや作業者の仕事はAIに奪われていきます。だからこそ、管理職やマネジメント、経営のポジションを勝ち取るスキルを身につけることが、これからのキャリアで重要になります。マネジメントの経験は転職にも独立にも役立つ、つぶしの効く力です。
ただ黙々とやっていると、便利な作業者として都合よく使われるだけです。そうではなく、「この部下を上げた方が上司にとってもプラスだ」と思ってもらう必要があります。上司の仕事を軽くし、上司自身の評価も上がると思わせたら、便利屋扱いから「上げて活躍してもらおう」へと変わります。黙々とやるだけでなく、頭を使って上司にそう思ってもらうよう動くことが求められます。
信頼を勝ち取る行動の全体像
上司から信頼を勝ち取り、決裁権や役職を任せてもらう行動は、5つに整理できます。いずれも上司の立場に立ち、上司の負荷を軽くする方向の行動です。まず全体像を確認します。
| 行動 | 内容 |
|---|---|
| 判断材料を整理して渡す | 判断基準・材料・リスクを整理し、上司と判断をシンクロさせる |
| 見えない仕事を先回りして拾う | 上司が抱える悩みや作業を察知し、期待を超えて先回りする |
| 感情ではなく構造で語る | 事象を構造化し、根本原因から解決策までを語る |
| 上司の評価を上げる動きをする | 上司の重要な2割の仕事を見抜いてサポートする |
| 上司の判断の癖を理解する | 上司の判断軸に合わせて情報提供と準備を先回りする |
判断材料を整理して渡す
決裁権を任されるには、「この部下は自分で判断できる」と心から理解してもらう必要があります。そのためには、どんな判断基準で、どんな材料をもとに、どう考えるかを上司に見せることです。その基準が上司と合っていれば、任せたくなります。
上司からすると、自分で意思決定するより「あいつに聞いておけば自分の考えと同じだ」と渡せる方が楽です。自分が考えるであろう判断基準は何か、判断材料は何か、その基準で考えるとどうなり、リスクはどこにあるかを整理して話せる部下がいると、「意思決定できるじゃないか、決裁権を渡しても大丈夫だ」と安心できます。
仕事ができる人は結論だけを言いがちですが、それだと上司とのズレを修正できません。「この判断基準で考え、こうで、リスクはこうあります」とプロセスまで話すと、上司はリスク重視かスピード重視かといった基準に合わせて修正できます。
これを続けると、上司と部下の判断基準がシンクロしていきます。シンクロすれば「これはお前に任せた」となりやすくなります。上司は判断の負荷が重いため、その負荷を渡せる人を欲しており、自らアピールすると重宝されます。
たとえばリスクを嫌う上司なら「このリスクが絶対に起きないようにしたい」という基準に合わせ、スピード重視の上司なら「リスクはこれだけありますが、許容できると思うのでこれで行きたい」と提案します。こうして上司の基準に合わせながら判断のプロセスを共有すると、任せてもらえる範囲が広がっていきます。
上司の見えない仕事を先回りして拾う
上司には、上から降りてくるタスクがあります。たとえば中期経営計画に関連して部署の戦略を考える、といった仕事です。それを察知し、「もしかしてうちの部署で考える必要があるかなと思って、考えてみたんです」と持っていくと、上司はしびれます。
頼まれてもいないものを先に出してくる部下は、上司から見て「上司視点が分かっている」と映ります。上司の抱える悩みや、大変そうなことで部下が肩代わりできることを先回りしてやっておくと、「ここまで考えてくれる人なら一段上の役職でもいいかも」と思ってもらえます。この視点でアンテナを立てているかどうかが、今の仕事を黙々とやるのとの決定的な違いです。
年間の動きを見ていれば、上司が忙しくなる時期は大体わかります。最近はセキュアな社内AIを使えば、若手でも論点出しやドラフト作り、ディープリサーチができます。それを上司の代わりにやっておくと、期待を超えた貢献になります。
大事なのは期待を超えることです。言われたことをやるのではなく、どうすれば喜んでもらえるか、驚いてもらえるかを考えます。期待の把握は聞くのが確実で、「何を実現したいか」「何のためにやるか」という目的とゴール基準を握り、それを超えます。
期待通りでは感動は生まれず、期待を超えて初めて感動します。会議で上司がちらっと言った一言や、飲んでいるときに漏らした悩みをキャッチしておき、「こういうのをやっておきました」と応えると信頼が生まれます。上司の痛み(ペインポイント)を突いて先回りすると、一気に上司の右腕・左腕になれます。
感情ではなく構造で語る
「現場から不満が出ていて大変です」と事象と感情だけを伝えると、上司には「この部下は分かっていない」と映ります。誰が言っているのか、どういう構造でそうなっているのか、というメカニズムを上司は知りたいのです。
構造とは、なぜそれが起きるのかという原因分析です。原因が複数組み合わさっている場合、何が根本原因なのかを整理して語れる人は、任せたくなります。事象を構造化し、根本原因を語り、解決策へ進むことが重要です。
事実だけを言わずに「こうした方がいいと思うんです」と思いつきで提案してくる人は少なくありません。しかし、事象があってそれを構造化し、根本原因を語ってから解決策に進む順序を踏まないと、温度感も伝わらず、感覚も共有されません。部分だけを見て提案する人と、俯瞰して構造で語れる人とでは、上司の信頼が大きく変わります。
部分だけを話す人は、部分でしか見られない人だと見なされます。上司が任せたいのは視野が広い人です。一段引いて俯瞰し、構造を見て語れる部下がいると、「もう一段上でもいいかな」と思ってもらえます。
上司の評価を上げる動きをする
上司が、その上司からどう評価されるかを見ておきます。仕事はパレートの法則どおり、2割の重要な仕事で8割の成果が決まります。上司にとって絶対に外せない2割の仕事が何かを把握することが鍵です。
その2割は絶対に成功しなければならない仕事です。そこをカバーし、「今心配なことはありますか」「私にできることはありますか」とサポートに入ると、「こいつがいたら助かる」となります。上司は、その部下を囲いたくなり、重宝するようになります。
上司の壺とは、上司の一番の成果は何か、そして上司はその上の上司から何で評価されているか、という点です。他の仕事はそこそこでも、この2割だけは外せません。そこを見抜き、リスクポイントをカバーしたり、上司が心配しているところを先回りして支えたりすると、上司はこの部下を自分の部下として持ち続けたいと考えます。
上司の判断の癖を理解する
人の判断には癖があります。迷ったらやる、リスクがあってもワクワクするならやる、といった判断軸です。スピード重視の人、合意形成を重視する人、年上部下の意見を尊重する人など、上司ごとに軸が異なります。
その癖を熟知し、合わせた情報提供と判断サポートをします。スピード重視なら準備を整え、リスク重視ならリスクを10個洗い出して重大なものを示し、合意形成型なら関係者に事前に話した内容を伝えます。判断に必要な情報を主体的に持ってくる部下は、上司にとって手放したくない存在になります。
本来、部下が相談に来たら上司は「これはリスクはどうなんだ」と聞かなければなりません。それを先回りしてやってくれると、上司はとても楽になります。こうした部下は多くないため、上司は「抜けてほしくないから評価を上げておく」となります。これも顧客視点・相手視点を鍛えるトレーニングであり、一段上・二段上の視座を養う機会になります。
これは相手視点を鍛えるトレーニング
これらの行動は、一見すると自己中心的に見えて、実は相手視点を鍛えるトレーニングです。仕事は相手視点であり、上司に認めてもらうとは、上司が重視することをサポートするということです。これはビジネスの基本である相手視点そのものです。
今与えられた仕事をこなすだけでなく、上司の立場に立って、上司が何に困り、どう判断し、どうすれば任せてもらえるかを考える。これは顧客視点・相手視点の強化であり、一段上・二段上の視座を養うトレーニングにもなります。自己中心的だと考えず、視座を上げる訓練だと捉えると取り組みやすくなります。
役職や決裁権は、ポジションが空いたから降りてくるものではありません。「この部下は一段上の仕事ができそうだ」と上司が判断したときに与えられます。出世には卒業方式と入学方式があり、プレイヤーとして卒業しただけでなく、管理職・経営者としての能力がありそうかが問われます。その能力を自分から掴みに行くことが大切です。
つまり、今のポジションで完璧に仕事をこなす「卒業」だけでは足りず、次のポジションでも通用しそうだという「入学」の見込みを見せる必要があります。上司の視点で先回りし、判断を支え、上司の評価を上げる部下は、その入学の見込みを自然に示せます。待つのではなく、自ら証明しに行く姿勢が、決裁権と役職を引き寄せます。
絶対にやってはいけないNG行動5選
上司の権限を奪おうとする
「奪う」といっても、上司の権限そのものを奪ってはいけません。上司の悪口を言い、「あの上司はできないから自分がやる」と上司の肩身が狭くなる動きはしないことです。あくまで上司を立てることが重要です。
今回紹介した行動は「奪う」という言葉を使っていますが、実際には上司が自分から手放したくなる状態をつくることです。上司の仕事を軽くし、判断を早くし、組織を前に進める部下が出てくれば、上司は率先して仕事を渡していきます。上司の権限を力ずくで奪うのではなく、良いフォロワーシップを発揮して右腕・左腕になることが本質です。
正論で殴る
正論は正しくても暴力的です。上司の判断軸からするとリスクがありすぎる場合もあります。正論を振りかざして言いすぎると嫌われることがあるため、注意が必要です。
正論は正しくても、上司からすると同意できないことがあります。上司の判断軸ではリスクが大きすぎると感じる場合もあるからです。正しさだけを押し通すと関係が悪化しかねないため、相手の判断軸を踏まえて伝え方を工夫することが求められます。
影で上司の悪口を言う
5つの行動をしていても、影で悪口を言うとどこかで伝わります。飲み屋での発言は誰かから漏れ伝わり、計画は台無しになります。不満を言いたくなったら、1人で言うにとどめます。
人は誰しも不満を持つものですが、それを他の人に言うと、必ずどこかから上司の耳に入ります。「あの人がこう言っていた」と伝わった瞬間、それまで積み上げた信頼が崩れます。どうしても吐き出したいときは、誰もいないところで1人でつぶやくだけにとどめ、表では上司を立てる姿勢を貫くことが賢明です。
上司を無能扱いする
優秀な部下ほど、無自覚に上司を少しバカにする態度が行動に出てしまいます。できすぎる部下は上司にとって怖い存在です。上司を無能扱いする動きは避けることが大切です。
「自分の方ができる」という気持ちが、態度や言葉の端々ににじみ出ると、上司は「この部下は自分を軽く見ている」と感じます。できる部下ほど、上司からすると脅威になりやすいのです。だからこそ上司を立て、あくまでサポート役に徹する姿勢が、かえって信頼と評価を引き寄せます。
政治的に動きすぎる
上司に対して動くだけでなく、さらにその上へと政治的に動きすぎると、「裏の動きをしすぎだ」と目をつけられます。腹黒く見えると余計に警戒されるため、注意が必要です。
これら5つのNG行動をすると、上司から見て「味方かと思ったら敵だったのか」と映り、余計に警戒されます。味方のような動きをしながら腹黒い敵だと見なされると、信頼を勝ち取るどころか逆効果です。あくまで上司の味方、サポート役として動き、組織が円滑に回る右腕・左腕になることが、決裁権や役職を任される近道になります。
明日から着手する順番
- 今の仕事だけでなく、上司の視点で何に困っているかにアンテナを立てる
- 仕事を受けるとき、目的とゴール基準を聞いて期待値を握る
- 結論だけでなく、判断基準・材料・リスクをセットで上司に見せる
- 年間の動きから上司の繁忙期を読み、降りてくる仕事を先回りする
- 上司の重要な2割の仕事を見抜き、そこをサポートする
- 上司の判断の癖に合わせて、必要な情報を主体的に準備する
- 権限奪取・正論・陰口・無能扱い・政治的な動きの5つを避ける
よくある質問
なぜ決裁権や役職を奪いに行く必要がありますか
プレイヤーの仕事はAIに奪われるからです。マネジメントや経営のスキルは転職や独立にも役立つ、つぶしの効く力になります。
真面目に働いても評価されないのはなぜですか
便利な作業者として使われるからです。黙々とこなすだけでは、上司に決裁権を任せられる人だと判断してもらえません。
決裁権が任される条件は何ですか
上司自身の評価も上がると思わせることです。上司の仕事を構造的に軽くできると、便利屋扱いから任せる対象へ変わります。
信頼を勝ち取る行動はいくつありますか
5つあります。判断材料の整理、見えない仕事の先回り、構造で語る、上司の評価を上げる、判断の癖の理解です。
判断材料を整理して渡すとは何ですか
判断基準・材料・リスクを見せることです。プロセスまで話すと上司の基準に合わせて修正でき、判断がシンクロします。
結論だけ伝えるのはなぜ不十分ですか
上司とのズレを修正できないからです。判断のプロセスを見せないと、基準が合っているかを上司が確認できません。
見えない仕事を先回りするとはどういうことですか
降りてくるタスクを察知することです。中期経営計画に関連する部署戦略などを、指示前に準備して持っていきます。
先回りにAIは使えますか
使えます。セキュアな社内AIなら、若手でも論点出しやドラフト、ディープリサーチができ、期待を超えた貢献になります。
期待を超えるにはどうすればよいですか
期待を把握することです。目的とゴール基準を聞いて握り、その水準を超えることで、上司やお客様に感動が生まれます。
感情ではなく構造で語るとは何ですか
原因分析で語ることです。事象と感情だけでなく、なぜ起きるのかの構造と根本原因を整理し、解決策へつなげます。
構造で語れないとどう見られますか
部分でしか見られない人と見なされます。上司が任せたいのは視野が広く、俯瞰して構造を語れる人です。
上司の評価を上げる動きとは何ですか
重要な2割の仕事を支えることです。パレートの法則で2割の仕事が8割の成果を決めるため、そこをサポートします。
上司の重要な仕事はどう見抜きますか
コミュニケーションで把握します。「今心配なことはありますか」「私にできることは」と聞き、絶対に外せない仕事を探ります。
上司の判断の癖とは何ですか
判断軸のことです。スピード重視、リスク重視、合意形成重視など、上司ごとに異なる軸を熟知して合わせます。
判断の癖に合わせるとは具体的にどうしますか
軸に応じて準備します。リスク重視なら10個洗い出して重大なものを示し、合意形成型なら関係者への事前確認を伝えます。
やってはいけない行動はいくつありますか
5つあります。権限奪取、正論で殴る、陰口、上司の無能扱い、政治的に動きすぎることです。
正論で殴るとなぜ嫌われますか
正論は正しくても暴力的だからです。上司の判断軸に合わないと同意できず、振りかざすと嫌われることがあります。
陰で不満を言いたくなったらどうしますか
1人で言うにとどめます。飲み屋での悪口はどこかで伝わり、信頼を勝ち取る計画が台無しになります。
この行動は自己中心的ではありませんか
相手視点のトレーニングです。上司が重視することを支える行動であり、顧客視点と同じく一段上の視座を鍛えます。
役職はポジションが空けば与えられますか
空きではなく能力の証明で決まります。一段上の仕事ができそうだと上司が判断して初めて、決裁権や役職が与えられます。
まとめ
- 評価されないのは能力ではなく、上司の視点に立てていないという構造の問題です。
- 決裁権は「この部下を上げると上司自身の評価も上がる」と思わせることで任されます。
- 信頼を勝ち取る行動は、判断材料の整理・先回り・構造で語る・上司の評価を上げる・判断の癖の理解の5つです。
- 上司の重要な2割の仕事を支えることが、8割の成果につながり信頼を生みます。
- これらは自己中心的な処世術ではなく、相手視点と視座を鍛えるトレーニングでもあります。
- 権限奪取・正論・陰口・無能扱い・過度な政治の5つのNG行動は避けます。
まずは自分の仕事だけでなく、上司が今何に困っているかにアンテナを立てることから始めてみてください。
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