社員にもっと主体的に動いてほしい。会議でもっと意見を出してほしい。それなのにメンバーは受け身のままで、指示待ちが増えていく。上司としては歯がゆく、どうすれば社員が自ら考え、活気にあふれて動き出す組織になるのか悩んでいませんか。
この問題の原因は、社員一人ひとりのやる気や資質ではありません。やる気満々で入ってきた人が受け身になるのは、指示待ちになった方が合理的だという組織の仕組みが原因です。主体的に動いて怒られた、挑戦して評価が下がった、目的が腹落ちしていない。そうした構造が受け身を生みます。仕組みと構造を作り替えれば、社員は自然と動き出します。
なぜ自走しない組織が生まれるのか
受け身の人をピンポイントで採用したわけではないのに受け身ばかりになるなら、それは採用ミスではなく組織の仕組みが原因です。やる気満々だった人がどんどん受け身になるのは、指示待ちになった方が合理性があるからです。
主体的に動いたら怒られた、評価が下がったという経験があれば、人は指示待ちになります。そもそも何のためにやるのかという目的が腹落ちしていないと、よく分からないまま言われたことだけをやるようになります。挑戦が生まれないのも、過去に挑戦して失敗した人が強く責められた経験が代々引き継がれ、挑戦しない方が得だという構造になっているからです。
言われたことしかしないのも、言われた以上のことをやったら怒られた、責任と権限の範囲が定義されていないといった仕組みが行動を生んでいます。部下のせいにするのではなく、そうなっているのは構造や仕組みが悪いのかもしれないと上の人が思うことが出発点です。仕組みと構造を作り替えれば、人は自然と動き出します。
自走する組織づくりでよくある3つの失敗パターン
いい会社にしようとして、かえって求心力を失う失敗パターンが3つあります。パーパス経営・丸投げ・尋問コーチングです。いずれも思いを持って良かれとやっているのに、社員が白けてしまう点が共通しています。
1つ目はパーパス経営の失敗です。コンサルに大金を払ってかっこいい理念ポスターや額縁を作っても、どこの会社にも当てはまるお題目では社員が冷めた目で見ます。日々のマネジメントで言葉と行動が食い違えば、求心力はむしろ失われます。2つ目は丸投げです。「君たちに任せるから自由にやって」と方向性を示さず任せると、社員が自由にやった結果が経営者の思う方向とずれ、後からちゃぶ台返しになってモチベーションが下がります。どこまでやっていいかのガードレールを定義しないまま任せると事故ります。3つ目は尋問コーチングです。コーチングは質問すればいいと聞きかじり、スキルを学ばずに「お前はどうしたいんだ」「何が原因なんだ」と問い詰めると尋問になります。質問には質があり、相手を追い詰める質問では主体性は生まれません。
自走する組織を作る5つのポイント
理想の組織を作るには5つのポイントがあります。これは積み上げ式で、ベースの部分から順に作っていく必要があります。北極星の提示から始まり、心理的安全性、権限、対話、評価へと積み上げます。まずは一覧で確認してください。
| ポイント | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | 北極星の提示 | 目指す先への理解と共感を作る |
| 2 | 心理的安全性の確保 | リスクある一歩を踏み出せるようにする |
| 3 | 権限移譲と設計 | 任せる範囲のガードレールを定める |
| 4 | 対話の質 | いい問いかけで思考を引き出す |
| 5 | 評価と承認 | 自走を評価する仕組みに作り替える |
1 北極星の提示
自分たちがどこに向かうのかという北極星を明確にします。パーパス、目的、ビジョンを言語化し、それと個人のやりたいことを重ね合わせます。自分たちの組織は何のために存在するのか、なかったら世の中にどんな良くないことがあるのかを明確にするのがパーパスです。
ビジョンは自社のビジョンだけでなく、お客さんや世の中に対してどんな価値を提供するかというビジョンを持つとよいものです。人間は意味の動物なので、目的を理解していると強くなります。これを社員に伝え、社員一人ひとりがどんな思いで仕事をしているかを聞きながらすり合わせます。100%重ならなくてよいですが、どこか重なるポイントがないと、その会社でやる意味がありません。本来は採用の段階で確認すべきものです。
2 心理的安全性の確保
北極星が見えても、一歩踏み出すのが怖いと人は動けません。ここで重要なのが心理的安全性です。これはぬるい職場や仲良しグループではなく、むしろ厳しい職場かもしれません。北極星の実現に向けて、リスクのあることも言ったりやったりできる状態です。
上司がキングなのではなく、ビジョンやパーパスがキングであり、それに共感して集まっているから、上司に「これは違うのでは」「分かりません」と言ってもいい状態です。これを実現するために最も効くのは、上の人が弱みをさらけ出すことです。リーダーが苦手な領域をさらけ出すと、弱みを見せていいんだ、カバーしようという主体性が生まれます。加えて、挑戦というプロセス自体を評価するナイストライの賞賛と、情報の透明性が必要です。情報格差があると意見が的外れになり、下の人は考えても仕方ないと言わなくなるため、経営状況や意思決定の背景をオープンにします。
3 権限移譲と設計
何を権限移譲し、何を決めていいのか、どこから先はダメなのかというガードレールを定義します。これがないと、自由にやってと言って後でちゃぶ台返しになり、メンバーのモチベーションが下がります。
起業して間もない頃、若手社員に会社の引っ越しプロジェクトをあまり考えずに任せた結果、お金のかかる一般的なプランが進んでしまい、こだわりを伝えてひっくり返したことで社員に恨みを持たれた経験があります。早めに「ここがこだわりポイントだから外さないで」と伝え、ここまでは自分で決めていいというラインを明確にしておけば、関係は悪くならなかったはずです。自分のこだわりはどこで、どこは外してはいけないかを明確にすることが大切です。
4 対話の質
尋問コーチングではなく、いい問いかけを実践します。上司が常に答えを言っていると部下は考えなくなり、思考が止まります。自走してほしいなら、ティーチング的なアプローチから、引き出すコーチング的なアプローチへの転換が必要です。
問題が起きた時に「こう解決して」と教えるのではなく、「どんな選択肢があると思う」と聞いて相手の選択肢を引き出し、応援し賞賛して後押しします。自分が言ったことを応援してもらえた方が主体性は高まります。失敗した時も「なぜなぜ」と過去の原因を掘り下げすぎるより、「次からうまくいくためにどうしたらいいと思う」と未来質問をします。未来質問には原因分析の要素も含まれます。成果が出た時は、あの時のこの判断・行動が良かったと具体的にプロセスを褒めると、再現性が出て次につながります。
5 評価と承認
働く人にとって評価は重要で、自走がちゃんと評価される制度になっているかが問われます。減点方式だと、挑戦して失敗した方が損になり、自走が抑えられます。失敗を責めるのではなく、挑戦や成長を評価する加点方式にします。
結果だけで見るとチャレンジしにくいため、特に若手や自走の段階の人にはプロセス評価を入れます。ベテランになれば結果評価でよいものです。また上の人からだけの評価は偏ります。面倒見が良くメンバーをサポートした、職場の雰囲気を良くしたといった日々の行動は上司から見えにくいため、360度サーベイやピアボーナスで思いを伝え合う仕組みを入れます。強化と承認の仕組みを自走型に合わせて作り直すことが大切です。
解決策・打ち手
パーパス・目的・ビジョンを個人の思いと重ねる
組織の存在意義とビジョンを言語化し、社員一人ひとりの思いを聞きながらすり合わせます。100%重ならなくてよいですが、どこか重なるポイントを見つけることで、理解と共感という自走の土台ができます。
上の人が弱みをさらけ出す
リーダーが「この領域は苦手だ」と弱みをさらけ出すと、このチームでは弱みを見せていいという安心感が生まれます。それが言いにくいことも言いやすくする心理的安全性につながり、メンバーの主体性を引き出します。
情報を透明化する
経営状況や意思決定の背景をできるだけオープンにします。情報格差があると意見が的外れになり考えなくなるため、部下が意見を言わないなら情報が足りていないのかもしれないと振り返ることが必要です。
任せる範囲のガードレールを定める
どこまで自分で決めてよく、どこから先はダメかを明確にします。自分のこだわりポイントを先に伝えた上で任せることで、後のちゃぶ台返しを防ぎ、メンバーのモチベーションを守ります。
ティーチングからコーチングに転換する
「こう解決して」ではなく「どんな選択肢があると思う」と問いかけ、相手の選択肢を引き出して応援します。失敗時は未来質問で次にどうするかを考え、成果時はプロセスを具体的に褒めて再現性を高めます。
加点方式とピア評価で自走を承認する
減点方式をやめ、挑戦や成長を評価する加点方式にし、若手にはプロセス評価を入れます。上司から見えない日々の貢献を拾うため、360度サーベイやピアボーナスなど強化と承認の仕組みを自走型に作り直します。
明日から着手する順番
- 1on1やミーティングの問いを「あなたはどうしたいと思う」に変え、口癖にする。最も着手しやすい第一歩です。
- 「ここまでは任せる」と小さな範囲を区切って明言して渡す。
- 挑戦を承認する「ナイストライ」を口癖にする。
- リーダーが弱みをさらけ出し、言いにくいことも言える心理的安全性を作る。
- 経営状況や意思決定の背景を透明化し、情報格差をなくす。
- 失敗時は未来質問、成果時はプロセスを具体的に褒める対話に変える。
- 減点方式を加点方式に改め、プロセス評価や360度サーベイで自走を承認する。
よくある質問
自走しない組織が生まれる原因は何ですか?
組織の仕組みが原因です。やる気満々だった人が受け身になるのは、指示待ちになった方が合理的だからで、採用ミスではなく構造が受け身を生んでいます。
指示待ちはなぜ起きるのですか?
指示待ちの方が合理的だからです。主体的に動いて怒られた、評価が下がったという経験があると、人は指示待ちになった方が得だと判断します。
自走組織づくりの失敗パターンは何ですか?
3つあります。お題目だけのパーパス経営、方向性を示さない丸投げ、スキルなしの尋問コーチングで、いずれも良かれとやって求心力を失います。
パーパス経営はなぜ失敗しますか?
言葉と行動が食い違うからです。かっこいい額縁を作っても、日々のマネジメントで書いてあることとやることがずれると社員が白け、求心力を失います。
丸投げはなぜよくないのですか?
方向性を示さないからです。自由にやってと任せると経営者の思う方向とずれ、後でちゃぶ台返しになってメンバーのモチベーションが下がります。
尋問コーチングとは何ですか?
スキルなしの問い詰めです。「お前はどうしたいんだ」と質問しても、相手を追い詰める質問では主体性は生まれず、大概の場合は尋問になります。
自走する組織を作るポイントはいくつですか?
5つあります。北極星の提示、心理的安全性の確保、権限移譲と設計、対話の質、評価と承認で、積み上げ式にベースから作っていきます。
北極星とは何ですか?
自分たちが向かう先です。パーパス・目的・ビジョンを言語化したもので、これと個人のやりたいことを重ね合わせることが自走の土台になります。
パーパスと個人の思いは完全に重なるべきですか?
100%重ならなくてよいです。ただしどこか重なるポイントがないとその会社でやる意味がないため、重なる部分を見つけることが重要です。
心理的安全性は仲良しグループのことですか?
違います。むしろ厳しい職場かもしれません。北極星の実現に向けてリスクのあることも言ったりやったりできる状態が心理的安全性の高い状態です。
心理的安全性を高めるのに最も効くのは何ですか?
上の人が弱みをさらけ出すことです。リーダーが苦手な領域を見せると、弱みを見せていい、カバーしようという安心感と主体性が生まれます。
情報の透明性はなぜ必要ですか?
情報格差が主体性を奪うからです。情報がないと意見が的外れになり、下の人は考えても仕方ないと言わなくなるため、背景をオープンにします。
権限移譲で大事なことは何ですか?
ガードレールを定めることです。どこまで決めてよく、どこから先はダメかを明確にしないと、後でちゃぶ台返しになりモチベーションが下がります。
任せる時こだわりはどう扱いますか?
先に伝えます。自分のこだわりポイントと外してはいけない線を先に伝えた上で任せると、後のひっくり返しを防ぎ、関係の悪化も避けられます。
ティーチングとコーチングはどう使い分けますか?
自走を促すならコーチングです。答えを教えるのではなく「どんな選択肢があると思う」と引き出し、応援することで主体性が高まります。
失敗した部下にはどう問いかけますか?
未来質問をします。「なぜ」と過去を掘り下げすぎず、「次うまくいくためにどうしたらいいと思う」と未来に目を向ける方が効果的です。
成果が出た時はどう褒めますか?
プロセスを具体的に褒めます。あの時のこの判断・行動が良かったと分岐点を褒めると、再現性が出て次のポジティブサイクルにつながります。
減点方式はなぜ自走を妨げるのですか?
挑戦した方が損になるからです。減点方式だと失敗を恐れて自走が抑えられるため、挑戦や成長を評価する加点方式にすることが必要です。
若手の評価で意識すべきことは何ですか?
プロセス評価を入れることです。結果だけではチャレンジしにくいため、自走の段階の若手には結果に加えてプロセスを評価してあげます。
明日からできる第一歩は何ですか?
問いかけの口癖を変えることです。「あなたはどうしたいと思う」を口癖にし、小さな範囲を任せ、「ナイストライ」で挑戦を承認します。
まとめ
- 自走しない組織が生まれるのは社員の資質ではなく、指示待ちの方が合理的になる仕組みと構造の問題です。
- パーパス経営・丸投げ・尋問コーチングは、良かれとやって求心力を失う代表的な失敗パターンです。
- 自走する組織は、北極星の提示・心理的安全性・権限移譲と設計・対話の質・評価と承認の5つを積み上げて作ります。
- 心理的安全性はぬるい職場ではなく、上の人が弱みをさらけ出し、リスクのある発言ができる状態です。
- 減点方式を加点方式に改め、プロセス評価やピア評価で自走を承認する仕組みに作り替えます。
まずは1on1やミーティングの問いを「あなたはどうしたいと思う」に変え、口癖にするところから始めてください。
動画特典
この動画では、自走する組織を作るためにリーダーが使うべき「言葉の言い換え一覧」を特典としてご用意しています。リーダーの口癖が変わると組織の文化が変わるため、日々の問いかけの参考にご活用ください。
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