日本のチームワークは世界に誇れる強みだ。そう聞いて、疑いなくそう思ってきた方は多いはずです。和を大切にし、みんなで力を合わせて一体感を持って頑張る。確かに勝ちパターンが決まっている時代には、この一体感が強力な武器になりました。しかし変化の時代のいま、なぜか新しいチャレンジが起きにくい、会議が本音の出ないシャンシャン会議になる、と感じてはいませんか。
この問題の原因は、社員一人ひとりの能力ではありません。日本のチームワークが「調和優先型」に偏り、同質性を求める構造になっていることが原因です。海外のチームワークは目的達成を最優先し、異質な個性を統合します。日本型が悪いのではなく、いまの状況にどちらが必要かを見極め、使い分けることが組織を強くします。
なぜ日本のチームワークが変化に弱くなるのか
チームワークという言葉は、日本と海外で意味が違います。日本のチームワークには、どこか同質性を求めるニュアンスがあります。「みんなでやっているんだから合わせろ」「和を乱すな」という感覚が含まれる調和優先型です。
この同質性は、高度経済成長の時代には強くはまりました。勝ちパターンが決まっていて、これをみんなで全力でやれば勝てるという環境では、同じ方向に集中する力が非常に有効だったからです。スポーツのようにルールと目的が明確な場面でも、日本の一体感は極めて強く機能します。
しかし何をやれば成功するか分からない今の時代には、「これをやれ」という中で同質性を求めると、新しいチャレンジが起きにくくなり弱くなります。海外のチームワークは、目的を達成するために集まったという意識が強く、そのためにはガチで議論をぶつけ合います。個性的な強みを持つ人を集め、目的のために力を合わせるのが海外型のチームワークです。
調和優先型と目的達成型の前提の違い
日本のチームワークは、目的・目標が明確な時には非常にいいものです。ワールドカップの日本代表のように、お互いを信頼し尊重し合いながら、目標と戦略を全員が理解して力を合わせる。これはこれで素晴らしく、世界でも稀に見る強さです。
問題は、目的・目標が弱く、調和の方が優先されるチームです。企業だけでなく、友達同士やPTAの話し合いなど、目的よりも人間関係を重視する場面で日本は特に強く出ます。忖度して言えない、あの人が言うからそうかなと、人間関係が崩れないことを優先してしまいます。
一方、欧米のチームでは目的ドリブンで「このためにこうした方がいい」と意見をぶつけ合います。それぞれがプロとしての誇りを持ってぶつかり合いますが、それはいいものを作るため、目的を達成するためです。日本では意見の対立があるとチームワークが悪いと捉えられがちですが、対立しても人間関係が崩れないことこそ、本当の意味でチームワークがいい状態です。
日本と海外のチームワーク5つの違い
日本型と海外型のチームワークには、解像度を上げると5つの観点で違いがあります。いずれもどちらが良い悪いではなく、状況によって使い分けるべきものです。まずは一覧で確認してください。
| 観点 | 日本のチームワーク | 海外のチームワーク |
|---|---|---|
| 1 伝達 | 察する | 言語化する |
| 2 役割 | 役割の曖昧さ | 役割の明確さ |
| 3 議論 | 和を保つ | 議論を戦わせる |
| 4 多様性 | 同質の同調 | 異質の統合 |
| 5 個性 | チームのために個を抑える | 個を生かしてチームにする |
1 日本は察する、海外は言語化する
日本は察することを相手に求め、言わなくても分かる人が優秀だとされます。話す側より受け手側に責任が重くのしかかる構造です。一方、海外はいろいろな人がいることが前提のため、察することを求めると効率が悪すぎます。
インド人・中国人・アメリカ人・スウェーデン人が言うことの背景を察していたら、わけが分からなくなります。だから言う側がちゃんと言えという発信側の責任になります。日本では曖昧な指示を察するのができる人ですが、海外では曖昧な指示をするとダメ上司だと見切られます。年代・性別・国籍・バックグラウンドが違う人に察することを求めるのは効率が悪く、AIも雑な指示にはずれた答えを返すのと同じで、言語化する意識が必要です。
2 日本は役割の曖昧さ、海外は役割の明確さ
日本はジョブディスクリプションでガチガチに縛らず、ざっくりさせていろいろやってもらうという形です。上司はいろいろお願いでき、メンバーもさまざまな仕事を経験できて成長機会が増えるメリットがあります。一方、海外はジョブ型で役割・責任を明確に定義し、そのジョブに対して契約します。
海外ではゴミ捨てを頼むと「ジョブディスクリプションに書いていない」と言われ、清掃係が別にいます。どちらが良い悪いは分かれますが、日本は曖昧すぎて責任の所在が分からず連帯責任になりがちで物事が進みにくく、海外はビシッと決まりすぎて定義されていない隙間が抜け落ちがちです。今、海外はジョブディスクリプションを緩やかに書く方向に動いており、ある程度役割を決めつつ隙間をみんなで埋めていく協力ができるとより良くなります。
3 日本は和を保つ、海外は議論を戦わせる
日本のチームワークは和を保つことが強みで、力になる時はいいものです。しかしそれがみんなの基準を上げることにつながっているかが問われます。上司が言うから言わない、頑張っている人が言うから反対しにくいとなり、会議がシャンシャン会議になって建設的な議論にならないことがあります。
時間を取っているのに本音を喋らず、人間関係を優先して中途半端な議論になるのは非効率です。特にヨーロッパは目的に対して議論をバンバンします。嫌われていると思うほどガーッと言ってきても、本人は目的のためにやっているだけで悪気はありません。いいものを作りいい結果を残すために、対立しても人間関係が崩れないことが本当の意味でチームワークがいい状態です。これは心理的安全性であり、仲良しクラブではなく、高い目的達成のために言いにくいことも言うことです。
4 日本は同質の同調、海外は異質の統合
日本はみんなに合わせろという価値観がよしとされがちです。しかし冷静に考えれば、みんながやっているから正しいとは限りません。一方、海外はそれぞれ違う人が集まるからチームで集まる意味があると考え、あえて自分と違う人を連れてきます。
自分と違う強みや特徴を持つ異質な人をリスペクトし尊重しますが、目的は共通し、目標にコミットします。日本は同じようにすることで一体感を持つのに対し、海外は目指すものが同じであることで一体感を持ち、違う人を統合します。これがダイバーシティ&インクルージョンで、多様性だけではバラバラになるため、目指すものに向けて含めていくインクルージョンが必要です。答えが分からない時ほど、この異質の統合が力になります。
5 日本はチームのために個を抑える、海外は個を生かしてチームにする
日本は「チームのために我慢しろ」という言葉がよく聞かれます。一方、海外は「あなたのこれを生かしてチームにどう貢献するのか」と個性を尊重し、個性を発揮していないと「このチームにいらない」と言われるシビアさもあります。
どちらが良いかは状況によります。工場で同じ品質のものを作る、銀行で1円も間違えないといった場面では、個性を殺してでも貢献する献身が素晴らしい成果を生みます。しかしイノベーションを起こす、まだ答えが分からないことに挑戦する時には、個を生かしてチームにする方がいいのです。答えが決まってみんなでやろうという段階では日本のチームが強く、決まるまでは個を生かした方がよいため、使い分けが大切です。
解決策・打ち手
状況に応じて2つのチームワークを使い分ける
勝ちパターンが決まりみんなで信じてやることが競争力の源泉である時は、日本型のチームワークでいいものです。しかしまだ答えが分からない時には、目的をもとに議論を戦わせ統合する海外型が力を発揮します。今の事業フェーズにどちらが必要かを見極めて使い分けます。
察するのをやめて言語化する
部下の察する力に依存せず、発信する側が分かりやすく伝えます。年代・性別・国籍が違う人に察することを求めるのは効率が悪く、AIに具体的なプロンプトを打つといい仕事をするのと同じで、人にも丁寧に言語化することでいいアウトプットが返ってきます。
役割を決めつつ隙間をみんなで埋める
誰が責任を取るのかをある程度決めながら、定義されていない隙間はみんなで協力して埋めます。曖昧すぎて連帯責任になるのも、決まりすぎて隙間が抜け落ちるのも問題のため、緩やかな役割設定と協力の両立を目指します。
対立しても人間関係が崩れない議論をする
いいものを作るために議論を戦わせ、対立しても人間関係が崩れない状態を目指します。これは仲良しクラブではない本当の心理的安全性であり、高い目的達成のために言いにくいことも言えるチームが強いチームです。
異質な人を目的で統合する
あえて自分と違う強みや特徴を持つ人を集め、リスペクトしながら、目指すものが同じであることで一体感を持たせます。多様性だけではバラバラになるため、目的と目標へのコミットで統合するインクルージョンを行います。
相手の背景を知りながら言いたいことを言う
相手のせいにせず、なぜその行動をしたのかと相手の背景を知ろうとします。その上で、相手への愛情や配慮を持ちながら言いたいことはちゃんと言う。これができるとインクルージョンができ、いい人間関係とチームワークが育ちます。
明日から着手する順番
- 今の事業フェーズで日本型と海外型のどちらのチームワークが必要かを見極める。最初の判断軸になります。
- 指示や依頼を察することに頼らず、発信する側が具体的に言語化する。
- 会議で本音が出ないシャンシャン会議になっていないかを点検する。
- 対立を恐れず、いいものを作るために言いにくいことも言える場を作る。
- 役割をある程度決めつつ、定義されない隙間をみんなで埋める協力を促す。
- あえて異質な人を入れ、目指すものへのコミットで統合する。
- 相手の行動の背景を知ろうとし、配慮を持ちながら言いたいことを言う関わりに変える。
よくある質問
日本のチームワークは本当に強いのですか?
状況によります。目的が明確な時は世界でも稀な強さを発揮しますが、答えが分からない変化の時代には同質性が新しいチャレンジを妨げ弱くなります。
日本と海外でチームワークの意味は違いますか?
違います。日本は調和を重んじる調和優先型、海外は目的達成を最優先しガチで議論をぶつけ合う目的達成型で、前提となる価値観が異なります。
日本と海外のチームワークの違いはいくつありますか?
5つあります。察するか言語化するか、役割の曖昧さか明確さか、和を保つか議論を戦わせるか、同質の同調か異質の統合か、個を抑えるか生かすかです。
調和優先型のチームワークはいつ有効ですか?
勝ちパターンが決まっている時です。高度経済成長期のように、これをやれば勝てると決まった環境では、同質性による一体感が強力な武器になります。
なぜ察することを求めると問題なのですか?
効率が悪すぎるからです。年代・性別・国籍・バックグラウンドが違う人に察することを求めると背景の解釈がバラバラになり、伝達がうまくいきません。
言語化はなぜ重要なのですか?
いいアウトプットにつながるからです。AIに具体的なプロンプトを打つといい仕事をするのと同じで、人にも分かりやすく言語化すると成果が変わります。
役割が曖昧だと何が問題ですか?
責任の所在が分からなくなります。あの人この人と曖昧になり連帯責任のようになって物事が進みにくく、決めないでおこうとなりがちです。
役割を明確にしすぎると何が起きますか?
定義されていない隙間が抜け落ちます。決められたこと以外をやらなくなるため、海外もジョブディスクリプションを緩やかに書く方向に動いています。
シャンシャン会議はなぜ問題ですか?
時間を取っても本音が出ないからです。人間関係を優先して中途半端な議論になり、建設的な結論に至らずそのまま流れていってしまいます。
対立するチームワークは悪いことですか?
悪いことではありません。いいものを作るための議論であり、対立しても人間関係が崩れないことこそ本当の意味でチームワークがいい状態です。
心理的安全性は仲良しクラブのことですか?
違います。本当の心理的安全性は、高い目的達成のために言いにくいことも言える状態であり、仲良く波風を立てないことではありません。
同質の同調はなぜ変化に弱いのですか?
新しいチャレンジが起きにくいからです。みんなに合わせろという価値観では、みんながやっているから正しいとは限らないのに同調が優先されます。
異質の統合とは何ですか?
違う人を目的で束ねることです。あえて自分と違う強みを持つ人を集め、目指すものが同じであることで一体感を持たせて統合する考え方です。
ダイバーシティだけでは不十分ですか?
不十分です。多様性だけではバラバラになるため、目的や目標に向けて含めていくインクルージョンとセットで初めて力になります。
個を抑えるのと生かすのはどちらがよいですか?
状況によります。工場や銀行のように正確さが要る場面は個を抑える献身が有効で、イノベーションや未知への挑戦では個を生かす方が有効です。
2つのチームワークはどう使い分けますか?
答えが決まっているかで分けます。決まってみんなでやる段階は日本型が強く、答えが分からず決まるまでの段階は個を生かす海外型が適します。
日本型と海外型は両方使えますか?
両方使えます。日本型は否定するものではなく、2つのチームワークがあると理解して、いいとこ取りや使い分けをする柔軟性が組織を強くします。
幹部が優秀かどうかは何で分かりますか?
行動の背景を探れるかです。人前で怒鳴らず、なぜその行動をしたのかという構造の問題点を探せる人が優秀な幹部だと考えられます。
相手のせいにするとなぜよくないのですか?
同じことを繰り返すからです。人のせいにすると次の人でも同じ問題が起き、仕組みや環境を整えると再現性のある改善につながります。
異質な人と対立して仲が悪くならない方法は?
相手の背景を知ろうとすることです。配慮や愛情を持ちながら言いたいことは言う。背景に興味を持つとインクルージョンができ、関係が崩れません。
まとめ
- 日本のチームワークが変化に弱くなるのは個人の能力ではなく、調和優先型で同質性を求める構造の問題です。
- 日本型は目的が明確な時に世界でも稀な強さを発揮し、海外型は答えが分からない時に議論と統合で力を発揮します。
- 両者には察するか言語化するかなど5つの違いがあり、どちらも良い悪いではなく使い分けるべきものです。
- 本当の心理的安全性は仲良しクラブではなく、対立しても人間関係が崩れず高い目的のために言い合える状態です。
- 異質な人を目的で統合し、相手の背景を知りながら言いたいことを言うことで、日本の組織はもっと強く自由になれます。
まずは今の事業フェーズで日本型と海外型のどちらのチームワークが必要かを見極めるところから始めてください。
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