頑張っているのに評価されない。そう感じた社員が会社を去っていく。AIの導入で成果を出す人と出さない人の差が今まで以上に広がり、それが正当に評価されていないという不満が露呈してきています。人事評価に納得感がなく、「総合的に判断した」という曖昧な説明で片づけられ、みんなが頑張ろうと思えない。そんな状況に心当たりはありませんか。
この問題の原因は、人事制度そのものの出来ではありません。日本の人事は制度自体は良くても運用がいまいちで、人事制度は運用が9割です。立派な制度を作っても運用でグダグダになり、その運用の鍵を握るのは現場の管理職です。運用を改善すれば、優秀な社員が納得する評価は実現できます。
なぜ人事制度が機能しないのか
人事制度は昔から日本の弱みです。制度自体は良くても運用がいまいちというケースがほとんどで、コンサルが入って立派な制度ができても運用でグダグダになります。年功序列の名残から、評価をしっかりやらなくても回ってきた歴史があり、「そんなにしっかりやらなくてもいい」という空気が脈々と流れてきました。
ところが若手からすると、それはフェアではないと映ります。AIの導入で成果を出す人と出さない人の差が広がり、それが正当に評価されていないことが露呈してきました。運用力が低いのは人事担当者の問題もありますが、最も大きいのは一人ひとりの社員と対峙して向き合う現場の管理職です。
人事部が仕組みを作っても、管理職が「総合的に判断した」と曖昧な説明で済ませると、メンバーに納得感は出ません。すると誰も頑張ろうと思えなくなります。日本のエンゲージメントレベルが先進国の中で最低であることには、この人事制度の運用がグダグダな影響も大きく関わっています。
人事は会社からのメッセージという前提
人事は会社からのメッセージです。評価面談は、そのメッセージを伝えるすごく大事な機会です。この機会をうまく使わないと、社員それぞれが頑張っても頑張りどころがずれたまま放置されます。
頑張っているのに成果が上がらない、頑張っているけれどずれている、あるいは頑張らない人を量産する。これは会社からすると大きな損失です。頑張りどころのずれをちゃんと補正していかなければ、競争力も下がり、管理職も部下のモチベーションが上がらず、最悪の場合は離職に至ります。
いい人事制度を作ることと、それを社員一人ひとりにきちんと届けることは全く別です。いい制度を作っても、管理職が理解せず好き嫌いでやってしまえば台無しですし、基準をもとにフィードバックしなければ台無しです。だからこそ運用が9割なのです。
優秀な社員が納得する人事評価運用のポイント3つ
人事制度を運用で機能させ、優秀な社員が納得する評価を実現するには、3つの運用ポイントがあります。いずれも制度の出来ではなく、管理職の関わり方で変わる部分です。まずは一覧で確認してください。
| ポイント | 内容 | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | 評価は面談の質で変わる | フィードバックで納得感と意欲を生む |
| 2 | 目標のレベル合わせを行う | 甘い・曖昧・ずれた目標をなくす |
| 3 | 評価調整会を行う | 評価の物差しを合わせ偏りをなくす |
1 評価は基準だけでなく面談の質で変わる
評価は基準を合わせることも大事ですが、最も肝となるのは面談でありフィードバックです。半年間の評価結果がなぜそうなったのかを説明し、今後のキャリアを考えて何をやってほしいか、何ができれば上のグレードや給料に上がれるかをセットで管理職が話せるかどうかが問われます。
十中八九、自己評価の方が高くなります。数値だけ見せられても納得感は生まれず、フィードバックすらされずブラックボックス化している会社もまだあります。管理職はフィードバックが苦手で、特に自己評価より低くする説明はしにくいものです。しかし本人が納得し、しかも頑張ろうと思ってもらう必要があり、これにはテクニックがいります。研修やロールプレイで管理職にスキルを教えると、面談の質は大きく変わります。まずは評価面談が実施されているか、どれくらいの時間でどう行われているかを、管理職だけでなく一般社員へのアンケートで実態調査することが必要です。
2 目標のレベル合わせを行う
部下評価のために目標設定をするケースは多いものの、目標が曖昧で形だけになっていることが多くあります。目標の達成度で評価されると、達成度を上げるために目標を下げようとする力が働き、放っておくとどんどん下がります。真面目に高く設定した人がバカを見る構造です。
いまいちな目標のパターンは3つで、甘いか、曖昧か、ずれているかです。甘くすると達成度が上がりやすく、曖昧にすると後で調整が効くため、どちらも起きがちです。しかし曖昧にすると後でコミュニケーションコストがかかります。バックオフィスでも「いつまでにこの成果物を出して上司の承認をもらう」など、丸かバツか明確になる目標を立てれば揉めません。また個人の成長目標ばかりで部の目標と連動していないと、メンバー全員が目標達成したのに部の目標が達成できないというおかしなことが起きます。目標のレベル合わせは、管理職だけでなく一段上の人もチェックすべきです。
3 評価調整会を行う
評価調整会は、評価の物差し合わせのために重要です。甘辛調整とも言い、甘い人・辛い人の差、直近のことは覚えているが半年前を忘れる、ハキハキしているからいいはずだとイメージでつけるといった偏りを補正します。一人で評価すると偏るため、複数人で見てチェックし合う必要があります。
評価者同士が集まり、なぜその評価なのかを説明します。目標に対する結果だけでなく、プロセス評価であれば「こういう場面でこういう発言・行動があったから何点」と、具体的な行動と発言を根拠に紐付ける癖をつけます。管理職は観察してメモを取り、評価基準に照らします。調整会で解釈のずれが見つかれば物差しを合わせ、管理職間の甘辛をなくします。これは管理職の評価能力の育成にもつながるため、必ず行うべきです。
問題社員が増える人事制度の3つの特徴
人事制度は人の給料を決め、行動やモチベーションに影響を与えます。問題社員を増やしてしまう人事制度には3つの特徴があります。1つ目は成果だけを評価することです。成果評価は分かりやすい一方、プロセスや組織への貢献を見ないと「数字さえやっておけばいい」となり、同僚の足を引っ張る、部下育成を軽視する、上の言うことを聞かないといった行動が続出し、チームワークがボロボロになります。成果は大事ですが、成果評価だけにすると組織が崩壊します。
2つ目は評価基準が曖昧で属人的なことです。運用をちゃんとやらないと上司の好き嫌いで決まり、上司と馬が合う人が評価されます。メンバーはフェアと感じられずモチベーションが上がらず、ひねくれたり辞めたりします。3つ目は評価するが育成しないことです。評価が給料を決めるだけ、人を裁く道具として使われブラックボックス化すると、なぜその評価なのか分からず、育てる気がない・期待されていないと感じさせます。管理職の役割はできない人をできるようにすることなのに、それを放棄し放置すると、周りも基準値を下げ、ぬるま湯組織ができあがります。
解決策・打ち手
評価面談の実態をアンケートで調査する
管理職に聞くと「やっています」と答えますが、一般社員に「評価面談は行われたか」「理由や成長ポイントは説明されたか」とアンケートを取るとズタボロなケースが多くあります。まず実態を調べ、面談が実施されているか、どれくらいの時間でどう行われているかを把握します。
管理職にフィードバックのスキルを教える
管理職はフィードバックが苦手で、特に自己評価より低い評価の説明はしにくいものです。何も教えずにやれというのは酷なので、研修やロールプレイでスキルを教えます。本人が納得し、しかも頑張ろうと思えるフィードバックにはテクニックが必要です。
丸かバツか明確になる目標を立てる
甘い・曖昧・ずれた目標をなくし、丸かバツか明確になる目標を立てます。バックオフィスでも定量目標だけでなく、いつまでに成果物を出して承認をもらうといった形にすれば、後で揉めずコミュニケーションコストも下がります。
個人目標を部の目標と連動させる
個人の成長目標ばかりでベクトルがずれると、メンバー全員が達成したのに部の目標が達成できないことが起きます。去年の目標のコピペをやめ、部の目標と連動させることで、人事を事務作業から育成に使えるものにします。
評価調整会で物差しを合わせる
評価者同士が集まり、具体的な行動と発言を根拠に、なぜその評価なのかを説明し合います。解釈のずれを見つけて物差しを合わせることで、管理職間の甘辛をなくし、評価能力の育成にもつなげます。
評価と育成をつなげる
評価を給料決めや人を裁く道具にせず、育成とつなげます。低い評価の理由と伸びしろを伝え、次にどうすればよいかを示すことで、社員が納得し意欲を持って次に向かえるようにします。
明日から着手する順番
- 一般社員に評価面談の実態をアンケートで調査する。最も着手しやすく、ボトルネックが見える第一歩です。
- 評価面談が実施されているか、時間とやり方を把握し、フィードバックの現状を確認する。
- 甘い・曖昧・ずれた目標がないか、管理職と一段上の人でチェックする。
- 個人目標が部の目標と連動しているかを確認し、去年のコピペをやめる。
- 評価者同士の評価調整会を開き、具体的な行動を根拠に物差しを合わせる。
- 管理職に研修やロールプレイでフィードバックのスキルを教える。
- 評価と育成をつなげ、理由と伸びしろを伝えて意欲を引き出す運用に変える。
よくある質問
人事制度が機能しない主な原因は何ですか?
制度ではなく運用が原因です。人事制度は運用が9割で、立派な制度を作っても運用でグダグダになり、鍵を握るのは現場の管理職の関わり方です。
人事評価運用のポイントはいくつありますか?
3つあります。評価は面談の質で変わる、目標のレベル合わせを行う、評価調整会を行うの3つで、いずれも管理職の関わり方で変わります。
評価で最も肝となるのは何ですか?
面談でありフィードバックです。評価結果がなぜそうなったかを説明し、今後どうすれば上のグレードや給料に上がれるかをセットで伝えることが重要です。
自己評価と会社の評価はどれくらいずれますか?
十中八九、自己評価の方が高くなります。遠慮なく評価してもらっても大体高くなるため、数値だけ見せられても納得感が生まれません。
管理職がフィードバックを苦手とする理由は何ですか?
自己評価より低い評価の説明がしにくいからです。本人が納得し、しかも頑張ろうと思ってもらう必要があり、これにはテクニックが必要になります。
評価面談の実態はどう調べればよいですか?
一般社員へのアンケートで調べます。管理職はやっていると答えますが、社員に理由の説明や成長ポイントを聞くとズタボロなケースが多くあります。
目標のレベル合わせはなぜ必要ですか?
放っておくと目標がどんどん下がるからです。達成度を上げようと目標を下げる力が働き、真面目に高く設定した人がバカを見る構造になります。
いまいちな目標のパターンは何ですか?
甘い・曖昧・ずれているの3つです。甘くすると達成度が上がりやすく、曖昧にすると後で調整が効くため、どちらも起きがちになります。
バックオフィスの目標はどう立てればよいですか?
丸かバツか明確になる目標を立てます。定量目標でなくても、いつまでに成果物を出して承認をもらうといった形にすれば後で揉めません。
目標が曖昧だと何が起きますか?
後でコミュニケーションコストがかかります。「こういうつもりだった」と食い違うため、最初から曖昧でない目標を立てることがとても大事です。
個人目標と部の目標がずれるとどうなりますか?
メンバー全員が達成したのに部の目標が未達になります。連動していない証拠であり、目標のレベル合わせがされていない状態です。
評価調整会とは何ですか?
評価の物差しを合わせる会議です。甘辛調整とも言い、一人で評価すると偏るため複数人で説明し合い、解釈のずれをなくす必須のプロセスです。
プロセス評価はどう根拠づけますか?
具体的な行動と発言に紐付けます。こういう場面でこういう発言・行動があったから何点、と管理職が観察しメモした事実を評価基準に照らします。
問題社員が増える人事制度の特徴は何ですか?
3つあります。成果だけを評価する、評価基準が曖昧で属人的、評価するが育成しない、のいずれかが問題社員を増やす特徴です。
成果だけを評価すると何が問題ですか?
組織が崩壊します。数字さえやればいいとなり、同僚の足を引っ張る、育成を軽視するなどの行動が続出し、チームワークがボロボロになります。
評価基準が属人的だとどうなりますか?
上司の好き嫌いで決まります。馬が合う人が評価されるためフェアと感じられず、メンバーのモチベーションが上がらず離職にもつながります。
評価と育成がつながらないとどうなりますか?
ぬるま湯組織ができあがります。理由が分からずブラックボックス化し、問題社員が放置されると周りも基準値を下げてしまいます。
楽をする人が得をする構造はなぜ危険ですか?
優秀な人が去るからです。サボる人の分まで働く人が正当に評価されないと、心身ともにボロボロになり、賢い人ほどひっそり辞めていきます。
制度を作り直す必要はありますか?
必ずしも必要ありません。いまいちすぎる制度は最低限変えるべきですが、ピカピカな制度を作るより運用を改善する方がコスパがよい場合があります。
評価調整会には誰が参加すべきですか?
評価者同士に加え、一段上の人も参加すべきです。一次評価者だけで完結させず、複数の目でチェックし合うことで偏りとバイアスを防げます。
まとめ
- 人事評価に納得感がないのは制度の出来ではなく、運用が9割を占める中で運用がグダグダになっている構造の問題です。
- 優秀な社員が納得する運用のポイントは、面談の質・目標のレベル合わせ・評価調整会の3つです。
- 評価の肝はフィードバックであり、管理職にスキルを教え、面談の実態を社員アンケートで調べることが必要です。
- 目標は甘い・曖昧・ずれたものをなくし、丸かバツか明確にして部の目標と連動させます。
- 成果だけの評価・属人的な基準・育成しない評価は問題社員を増やすため、評価と育成をつなげます。
まずは一般社員に評価面談の実態をアンケートで調査し、運用のボトルネックを見つけるところから始めてください。
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