外国籍人材を採用したものの、職場になじめず早期に退職してしまう。日本人社員とのコミュニケーションがうまくいかず、期待した力を発揮してもらえない。こうした課題を抱える企業では、外国籍社員本人の日本語力や文化適応力だけに原因を求めてしまうことがあります。
しかし、優秀な外国籍人材が活躍できるかどうかは、受け入れる組織の仕組みと文化に大きく左右されます。外国籍社員の採用をきっかけに、暗黙のルールを言語化し、評価やキャリアを明確にし、目的を率直に話せる文化へ変えることで、日本人社員にとっても働きやすい組織へアップデートできます。
外国籍社員の採用が組織に与える影響
外国籍社員を採用すると、言語や文化の違いからコミュニケーションの難しさが生まれることがあります。日本語は漢字の読み書きも難しく、関西弁と標準語のような地域差もあります。日本人だけで働いてきた職場では、違いを受け入れるための準備が必要です。
一方で、優秀な外国籍人材が入ることで、組織全体の意識が高まるケースがあります。ある企業では、中国、韓国、台湾、インド、アメリカなどから新入社員を採用し、日本人とは別の外国籍社員向け研修を実施しました。
研修では仕事の疑似体験ワークを行い、1回目は外国籍社員のチームが圧倒的に高い成果を出しました。5日間ほどの研修の最終日に再び同じようなワークを行うことになり、日本人チームも刺激を受けて意欲を高め、お互いに競いながらレベルアップしていきました。
この変化は研修だけで終わりませんでした。職場でも、より早く成長したい外国籍社員が積極的に仕事を求め、出世していきました。当初は年功序列的な要素がある曖昧な人事制度によって退職者が出ましたが、実力主義へ変更すると、外国籍社員が昇進し、その姿が日本人社員にも刺激を与えました。
外国籍社員を1人、2人だけ採用する場合は、組織文化への影響が起きにくく、本人も孤立しやすくなります。まとまった人数で採用すると、互いに助け合える環境をつくりやすく、組織文化にも影響を与えやすくなります。
事業面でも可能性が広がります。スペイン語を使える人材がいればスペイン語圏のマーケットリサーチや問い合わせ対応がしやすくなり、中国語などを使える人材がいればインバウンド事業でも力を発揮できます。エンジニアや技術者など、日本国内で採用競争が激しい職種でも、対象を世界へ広げることで採用できる人材の母集団が広がります。
外国籍人材は採用方法を組み合わせて考える
グローバル人材を増やす方法は、外国籍社員を採用することだけではありません。海外経験のある日本人を採用する、日本人社員をグローバル人材へ育成する、外国籍社員を採用するといった方法を組み合わせることができます。
たとえば、海外留学経験があり外国語を話せる日本人を採用し、その人をハブとして外国籍社員のチームをマネジメントしてもらう方法があります。社内の日本人を育成し、外国籍社員をマネジメントしたり、海外事業のリーダーになってもらったりする方法もあります。
いきなり海外から採用するハードルが高い企業は、日本の大学で学んだ留学生を新卒で採用するところから始められます。動画では、日本に来ている留学生のうち日本企業への就職を希望する人は54%から55%程度いる一方、実際に就職が決まる人は38%程度と紹介しています。
日本で学び、日本企業で働きたいと考えている留学生は、言語や文化の異なる環境へ自ら挑戦してきた経験を持っています。1人だけでなく3人、5人とグループで採用し、互いに助け合える状態をつくることで定着しやすくなります。
外国籍社員がうまくいかないパターン4選
| パターン | 起きている問題 |
|---|---|
| 1. 日本人と同じ役割を期待する | 外国籍社員ならではの強みを生かせず、日本人と同じ物差しで評価してしまう |
| 2. ハイコンテクスト文化を押し付ける | 空気を読む、察する、根回しなど暗黙のルールを説明しない |
| 3. ガラスの天井とキャリアの不透明性 | 昇進や評価の基準が見えず、将来のキャリアを描けない |
| 4. 生活・メンタル面のサポート不足 | 生活のセットアップや職場での孤立に対する支援が足りない |
1. 日本人と同じ役割を期待する
最初に起きやすいのが、「なぜ外国籍人材を採用したのか」という共通認識がない状態です。人手不足だから採用したという認識だけでは、日本人と同じ仕事や振る舞いを求めやすくなります。
日本語や日本文化に慣れていない人に、日本人と同じ物差しだけを当てれば不利になります。本人も「それなら日本人を採用した方がよいのではないか」と感じ、自分が採用された意味を見失います。
必要なのは、日本人には難しいことや、本人の強みを生かせる役割を明確にすることです。海外市場のリサーチ、外国語での問い合わせ対応など、外国籍社員が入るからこそ広がる仕事をミッションとして設定します。
海外ではジョブ型雇用が中心で、スペシャリストとして採用されるケースが多くあります。日本企業のようにジョブローテーションを前提に何でも経験してもらう考え方が合わない場合もあるため、強みを生かせる役割とミッションを定義することが重要です。
2. ハイコンテクスト文化を押し付ける
ハイコンテクストとは、言葉にされていない文脈を読み、「空気を読む」「言わなくても察する」といったコミュニケーションを求める状態です。日本企業では、根回しなどルールブックに書かれていない習慣が多くあります。
日本で長く生活してきた人には自然に分かることでも、異なる文化で育った人には分かりません。会議で率直に反対意見を言った外国籍社員に対し、理由を説明せず「分かっていない」と評価すれば、本人は改善する機会も得られません。
暗黙の了解を減らし、日本の仕事文化や社内ルールを丁寧に説明し、文章にして伝える仕組みが必要です。外国籍社員の受け入れをきっかけに、これまで言語化してこなかった常識を棚卸しすることは、日本の若手社員にとっても有効です。
評価制度も同じです。成果やKPIではなく、年功序列的な要素や「頑張っている」「協調性がある」といった曖昧な基準だけで評価すると、納得感を得にくくなります。評価基準を明確にすることが定着につながります。
3. ガラスの天井とキャリアの不透明性
一般社員にはなれても管理職にはなれない、役員や管理職は日本人ばかりという状態では、外国籍社員が見えないキャリアの壁を感じることがあります。外国人枠として特別扱いされ、英語担当として便利に使われるだけでも将来像を描きにくくなります。
海外では2、3年で転職することも一般的で、短期間でも成長やステップアップを実感したいという意識があります。2、3年の間に、転職に匹敵するような昇格や成長、給与の上昇を実感できれば、転職せず残る選択肢も生まれます。
外国籍人材を採用するなら、評価をフェアにし、何をすればマネージャーになれるのか、さらに役員へ進む可能性があるのかを具体的にコミュニケーションすることが重要です。
4. 生活・メンタル面のサポートが不足している
外国から日本へ来た人にとって、仕事以前に生活のセットアップが大きな負担になります。賃貸契約、銀行口座の開設、役所の手続き、携帯電話の契約など、日本語が十分でなければ難しい手続きが数多くあります。
職場でも、外国人だからと距離を置かれたり、周囲と違う扱いをされたりすると孤独を感じます。本人は一緒に頑張りたいと思っていても、周囲が過度に気を使うことで疎外感につながる場合があります。
仕事面と生活面を支えるメンター役や世話役を置くことが有効です。毎年継続して外国籍社員を採用する場合は、先に入社した外国籍社員が後輩のメンターになる仕組みをつくると、同じ経験をした人同士で支え合えます。
ビザや生活のセットアップを人事担当者だけで抱える必要はありません。生活支援を請け負う外部企業なども活用し、本人が仕事へ集中できる環境を整えます。
外国籍社員が活躍できる組織の特徴5選
| 特徴 | 組織で整えること |
|---|---|
| 1. オンボーディング | 受け入れ側の共通認識と仕事・生活のサポート体制を整える |
| 2. 心理的安全性 | 反対意見や疑問も率直に言える文化をつくる |
| 3. パーパス・目的の共有 | 何のために働くのか、仕事の目的やゴールを共通言語にする |
| 4. 挑戦と学びの文化 | チャレンジや学びを評価し、トライできる環境をつくる |
| 5. 透明性 | 情報、意思決定のプロセス、評価基準をオープンにする |
1. オンボーディングを設計する
海外から来た人や日本の大学を卒業した留学生にとって、入社は大きな環境変化です。入社してから組織になじみ、仕事ができる状態になるまでのオンボーディングプロセスを意図的に設計します。
まず受け入れる日本人社員に、なぜ外国籍人材を採用するのか、何を期待しているのかを共有します。日本人とまったく同じことを求めるのではなく、一緒にチームをつくるという認識をそろえます。
仕事面・生活面を支える担当者を決め、初めて外国籍の部下を持つ上司にも支援が必要です。日本人の部下をマネジメントするとき以上に、指示やゴールを明確にし、「阿吽の呼吸」で理解してもらう前提をなくします。
外国籍社員側にも、日本の仕事文化を知る機会を用意します。報告・連絡・相談や時間に対する感覚など、日本では当たり前でも海外では共通ではない習慣があります。最初に違いを理解できれば、違和感や不満が大きくなるのを防ぎやすくなります。
2. 心理的安全性を高める
日本企業では、会議で上司に反対意見を言うと空気が悪くなるなど、言ってはいけないことが暗黙に存在する場合があります。しかし、率直に意見を言えない状態では、必要な情報や改善案が共有されません。
外国籍社員の入社を、ワーキングカルチャーを変えるきっかけにします。忖度を減らし、立場にかかわらず違う意見を率直に言える文化へ変えることで、外国籍社員だけでなく日本人社員も発言しやすくなります。
3. パーパスと目的を共通言語にする
仕事を依頼するとき、「何のためにやるのか」を説明することが重要です。海外では、部下が仕事の目的を確認し、目的に照らして不要な仕事を見直すことがあります。
日本では、目的を尋ねる人を「面倒な人」と捉えることがあります。しかし、時代やテクノロジーが変化する中で、昔のやり方が現在も最適とは限りません。目的に立ち返ることで、今のやり方が本当に必要かを考え直せます。
何のために働くのか、何を目指すのか、この仕事は何のためなのかというパーパスや目的、ゴールを共通言語にします。理由がある仕事なら、その背景もできる限り説明します。
目的を考える習慣が広がると、不要な仕事を見直しやすくなり、生産性向上にもつながります。外国籍社員のためだけではなく、組織全体を強くする文化づくりになります。
4. 挑戦と学びを評価する
外国籍社員には、新しい市場や事業への挑戦を期待する場面があります。しかし、チャレンジがすべて成功するわけではありません。失敗だけを評価のマイナスにすると、挑戦しにくい組織になります。
チャレンジそのものや、失敗から得た学びを評価し、トライできる人事制度と上司の関わり方へ変えていきます。外国籍社員だけでなく、日本人社員も保守的にならず、変化の中で実験できる文化をつくります。
5. 情報と意思決定の透明性を高める
情報、意思決定のプロセス、評価基準がブラックボックスになっていると、不信やモヤモヤが生まれます。反対に情報がオープンであれば、社員は必要な情報をもとに主体的に動きやすくなります。
日本語が苦手な外国籍社員がいる場合は、日本語の社内情報を英語など他の言語で確認できるようにします。AIを活用すれば、中期経営計画や社内ルールなどの情報を複数言語で確認しやすくなっています。
外国籍社員の採用をきっかけに、情報格差を減らし、意思決定や評価の基準を明確にします。透明性を高めることは、外国籍社員が安心して働くためだけでなく、組織全体の自律性を高めることにもつながります。
組織文化を強くする4つの打ち手
社内文化を言語化して共有する
英語の勉強会だけでなく、これまで阿吽の呼吸で共有してきた社内文化を言葉にする機会をつくります。会社が何を大事にしているのか、どのような歴史があるのか、何をしてはいけないのかを共有します。
文化を言語化すると、外国籍社員だけでなく、新しく入社した日本人社員も組織になじみやすくなります。暗黙の了解を減らし、誰でも理解できる状態をつくることがポイントです。
全員が目的を言う習慣をつくる
施策や仕事を始めるとき、「この目的は何か」「目指しているビジョンやゴールは何か」を最初に言う習慣をつくります。相手に聞かれてから説明するのではなく、仕事を依頼する側から目的を明確にします。
目的を日常的に言葉にすることで、仕事の意味を確認しながら行動できるようになります。不要な手段を見直し、組織全体が同じゴールへ向かいやすくなります。
失敗共有会を月1回開催する
失敗は隠したくなるものですが、共有して次に生かせば組織の学びになります。月1回の失敗共有会を設け、失敗を勇気を持って共有した人を責めるのではなく、次の学びにつなげた行動を称賛します。
共有した失敗を理由に評価を下げたり、後から陰口を言ったりしてはいけません。挑戦すれば失敗することもあるという前提を共有し、成功だけでなく失敗からも学べる文化をつくることで、心理的安全性と挑戦意欲を高めます。
SNSに称賛投稿チャンネルをつくる
社内SNSなどに専用のチャンネルをつくり、「助けてもらった」「ありがとう」といった感謝や称賛を伝え合える状態をつくります。上司からは見えにくい同僚同士の良い関わりも可視化できます。
日本企業では褒めることに慣れておらず、ダメ出しが中心になる場合があります。日常的に称賛を言葉にする仕組みをつくり、良い行動を互いに認め合う文化へ変えていきます。
明日から着手する順番
- 外国籍人材を採用する目的と、本人に期待する役割・ミッションを言語化します。
- 受け入れ部署で目的を共有し、日本人と同じことを求める採用ではないことを確認します。
- 社内の暗黙のルールや仕事文化を棚卸しし、文章で説明できる状態にします。
- 評価基準とキャリアパスを確認し、何をすれば昇格できるのかを明確にします。
- 仕事面と生活面を支えるメンターや担当者を決め、オンボーディング体制を整えます。
- 仕事を依頼するときに目的やゴールを最初に伝える習慣をつくります。
- 月1回の失敗共有会や社内SNSの称賛チャンネルを設け、挑戦と称賛が生まれる文化をつくります。
- 情報、意思決定、評価基準をオープンにし、必要に応じてAIも使って多言語で確認できる状態にします。
よくある質問
外国籍人材を採用すると組織にどんな効果がありますか?
組織の活性化、人手不足の解消、優秀人材の獲得、海外事業やインバウンド事業の推進につながります。
外国籍社員は1人だけ採用してもよいですか?
1人では孤立しやすくなります。動画では3人、5人など助け合えるグループでの採用を勧めています。
外国籍社員には日本語力が必須ですか?
職種によります。営業では日本語が必要でも、技術職ではチーム内を英語にする方法もあります。
留学生を採用するメリットはありますか?
あります。日本で学び、日本企業への就職を希望する留学生は54~55%程度いると紹介されています。
日本企業へ就職できる留学生はどのくらいですか?
動画では38%程度と紹介されています。就職希望者との間に差があり、採用対象を広げる余地があります。
外国籍社員が定着しない主な原因は何ですか?
役割の不明確さ、暗黙の文化、キャリアの不透明性、生活・メンタル面の支援不足が主な4つです。
外国籍社員には日本人と同じ仕事を任せればよいですか?
同じ物差しだけでは不十分です。外国語や海外市場の知識など、本人の強みを生かすミッションを設定します。
ハイコンテクスト文化とは何ですか?
空気を読む、言わなくても察するなど、言葉にされていない文脈の理解を求めるコミュニケーションです。
評価制度はどう見直せばよいですか?
成果やKPIなど評価基準を明確にし、年功序列や曖昧な精神論だけに依存しない仕組みにします。
外国籍社員のキャリアパスはどう示せばよいですか?
何をすればマネージャーや役員を目指せるのか、評価・昇格の条件と将来の可能性を具体的に伝えます。
生活面ではどんな支援が必要ですか?
賃貸契約、銀行口座、役所手続き、携帯電話など、日本で生活を始めるための支援が必要です。
オンボーディングでは何を準備しますか?
採用目的と期待役割を受け入れ側で共有し、仕事・生活の担当者と上司への支援体制を整えます。
外国籍社員の上司にはどんな支援が必要ですか?
阿吽の呼吸に頼らず、指示やゴールを明確にするなど、異文化マネジメントの考え方を共有します。
心理的安全性を高めるには何を変えますか?
会議で反対意見や疑問を率直に言えるようにし、忖度や「言ってはいけない」という暗黙の空気を減らします。
仕事の目的を共有することはなぜ重要ですか?
目的に立ち返ると、昔から続く手段が今も必要かを見直せます。生産性と組織の強さにつながります。
挑戦する文化はどうつくりますか?
チャレンジと学びを評価し、失敗だけで評価を下げない制度と上司の関わり方へ変えていきます。
失敗共有会はどのくらいの頻度で行いますか?
動画では月1回を勧めています。失敗を共有した人を責めず、次の学びにつなげた行動を称賛します。
社内の称賛文化はどうつくれますか?
社内SNSに称賛投稿チャンネルをつくり、感謝や良い行動を同僚同士で言葉にする機会を増やします。
情報の透明性を高めるには何を公開しますか?
社内情報だけでなく、意思決定のプロセスや評価基準もオープンにし、情報格差を減らします。
AIは外国籍社員の受け入れに活用できますか?
活用できます。社内ルールや中期経営計画などを、必要な言語で確認できる環境づくりに使えます。
まとめ
- 外国籍社員の採用は、人材不足への対応だけでなく、海外事業やインバウンド事業、組織文化の活性化につながります。
- 定着を妨げる主な要因は、役割の不明確さ、ハイコンテクスト文化、キャリアの不透明性、生活・メンタル面の支援不足です。
- 活躍できる組織には、オンボーディング、心理的安全性、目的の共有、挑戦と学び、透明性が必要です。
- 社内文化の言語化、目的を言う習慣、月1回の失敗共有会、SNSでの称賛は、組織文化を強くする具体策です。
- 外国籍社員が働きやすいフェアで透明な組織は、日本人の若手や新入社員にとっても働きやすい組織になります。
まずは外国籍人材を採用する目的と期待する役割を言語化し、受け入れ側の共通認識をそろえるところから始めてください。
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