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管理職・マネジメント

管理職の仕事を減らした後、誰が引き受けるのか|負担を移すだけにしない業務設計

執筆・監修:森田英一 公開: 更新:
管理職の仕事の記事サムネイル。森田英一の人物写真と「減らした分、誰かが疲れる」の文字。

この記事の結論

管理職の仕事を減らすときは、担当者を替える前に、その仕事を残す必要があるかを確かめます。廃止・簡素化・移管を分け、移管する仕事には受け手の時間、判断材料、権限を添える。管理職の残業だけでなく、チーム全体の負担と成果を確かめることが、しわ寄せを生まない業務設計の出発点です。

結論

管理職の仕事を減らすときは、担当者を替える前に、その仕事を残す必要があるかを確かめます。廃止・簡素化・移管を分け、移管する仕事には受け手の時間、判断材料、権限を添える。管理職の残業だけでなく、チーム全体の負担と成果を確かめることが、しわ寄せを生まない業務設計の出発点です。

管理職だけが軽くなっても、改善とは限らない

管理職が作っていた資料を若手に任せる。会議への出席を代理に替える。確認作業を担当者へ戻す。いずれも仕事を手放す方法ですが、組織全体の仕事が減ったとは限りません。受け手が既存業務に上乗せして引き受ければ、負担の置き場所が変わっただけです。

さらに、作業は移ったのに判断権は管理職に残ると、受け手は作業のたびに確認する必要があります。管理職も相談対応を続けるため、表面上の担当変更ほどには時間が空きません。移管した仕事が別の形で戻ってくる状態です。

森田英一の既存解説では、管理職が仕事や判断を抱え込む構造を見直し、必要な情報や判断基準を部下へ開くことが示されています。本稿では、この原則を踏まえ、仕事を手放した後の負担と責任を確認する方法を編集提案として整理します。

最初に決めるのは「誰へ渡すか」ではない

仕事の棚卸しでは、まず成果物の利用者を確認します。誰が、どの判断に使っているのか。利用者がいない資料と、意思決定に使われる資料では、取るべき手が違います。長く続いていること自体を、必要性の根拠にしないことが大切です。

そのうえで、見直しを三つに分けます。廃止は、目的を失った仕事をなくすこと。簡素化は、必要な価値を残しながら工程や頻度を減らすこと。移管は、必要な仕事を別の人や役割に渡すことです。この順序で検討すれば、不要な仕事を丁寧に引き継ぐ事態を避けやすくなります。

ただし、利用頻度が低い仕事をすべて廃止してよいわけではありません。安全管理、契約上の対応、重要な記録などは、日常的に目立たなくても必要なことがあります。必要性を判断できない仕事は、所管部門に確認してから扱います。

一つの資料を使って、仕事の行き先を設計する

以下は特定企業の事例ではなく、運用を検討するための仮例です。部長が毎週まとめている案件進捗資料を、担当者へ移す場面を考えます。単に作成者を変更せず、資料が作られてから使われるまでを追ってみます。

1.資料の利用者に、必要な判断を聞く

経営会議で読み上げるだけなのか、遅れている案件に応援を出す判断に使うのか。目的が後者なら、必要なのは全案件の詳しい説明ではなく、遅れの兆候、影響、必要な支援かもしれません。資料の見栄えではなく、何を決めるための情報かを先にそろえます。

ここで、受け取る経営側も要求を変える必要があります。簡素化を認めながら従来と同じ体裁や説明量を求めれば、管理職は安心して減らせません。「この項目は不要」「この条件に該当する案件だけ報告する」と、依頼側が変更を明示します。

2.残す工程と、やめる工程を分ける

案件情報の入力、形式の調整、確認、説明、対応判断を別々に並べます。元の業務システムにある情報の転記をやめる、見た目の調整をなくす、といった簡素化ができれば、移管対象そのものが小さくなります。

一方、顧客との約束に関わる判断まで、資料作成と一緒に渡してよいとは限りません。入力する人、内容を確認する人、応援の配置を決める人を区別します。作業を任せることと、意思決定を任せることは、同じではないからです。

3.受け手の予定から、入れ替える仕事を決める

引き受けられるかを尋ねるだけでは、責任感の強い人ほど無理をしてしまいます。現在の締め切りや繁忙の波を確認し、何を減らすか、後ろへずらすか、別の人と分けるかを具体的に決めます。空き時間があるはずだという推測で進めないことです。

習熟までの時間も見込みます。管理職が短時間で終えていた仕事でも、初めて担当する人には確認が必要です。最初から同じ所要時間を求めると、質問を控えて見えない残業で埋める可能性があります。初期の支援は、移管の失敗ではなく移管に必要な工程と捉えます。

4.受け手が止まる条件を先に扱う

どの情報を見られるか、誰へ問い合わせられるか、どこまで自分で修正できるかを確認します。担当者に渡した仕事が、管理職しか閲覧できない情報に依存しているなら、移管は完了していません。必要な情報を適切な範囲で共有するか、その工程を責任者に残します。

例外が生じたときの相談先も必要です。「困ったら聞いて」だけでなく、提出が間に合わない、数字が一致しない、他部門の回答が来ないなど、止まりやすい場面を挙げます。相談を受ける側の応答方法まで決めれば、抱え込みを防ぎやすくなります。

削減の成否は、管理職と受け手の両側で見る

試行後は、管理職の作業時間だけを成果にしません。受け手の作業と確認が増えていないか、納期や品質が保たれているか、資料を使う側の判断が遅れていないかを合わせて見ます。全員に細かな時間記録を課すより、移管した仕事に限って負担の変化を聞く方が始めやすいでしょう。

管理職の空いた時間が何に使われたかも重要です。育成や課題整理に使うはずが、新しい社内資料で埋まったなら、仕事を生む側の要求を点検します。削減した仕事が別名で復活していないかも確認してください。

受け手が苦しんでいる場合、すぐに能力不足と判断せず、残した工程、期限、権限、支援を見直します。移管を一度撤回する選択もあります。その際は本人の失敗として処理せず、どの条件が整わなかったかを明らかにし、次の設計につなげます。

よくある質問

受け手がいないときは、管理職が続けるしかありませんか。

まず廃止や簡素化の余地を、仕事を要求している相手と確認します。必要な仕事を担う余力がどこにもないなら、管理職個人の工夫だけでは解けません。経営側が優先順位、提供範囲、体制のどれを変えるか判断する課題です。

移管すると品質が落ちそうで、任せられません。

必要な品質と、従来の担当者の好みを分けてください。守るべき条件を具体化し、初期は確認の機会を設けます。担当者が違っても同じ成果が出せるよう、判断の根拠を渡すことが、品質と育成を両立させる入口です。

全業務を一覧にしないと始められませんか。

最初から網羅する必要はありません。繰り返し発生し、負担が大きく、利用者を確認できる一つの仕事から始めます。その仕事で廃止・簡素化・移管を区別し、負担と成果の両方を振り返ってから対象を広げます。

まとめ

仕事を手放すとは、別の人に背負わせることではありません。残す価値を確かめ、その価値を無理なく生み出せる形へ組み替えることです。次に管理職の仕事を減らすときは、「誰に渡すか」の前に、「何をなくせるか」「受け手の何と入れ替えるか」を話し合ってみてください。

森田英一

この記事の執筆・監修

森田 英一(もりっしー)

beyond globalグループ President & CEO/組織開発コンサルタント

約30年、国内外1,000社以上の組織開発・研修を支援。日本・シンガポール・タイの3拠点で、日系企業の組織変革と次世代リーダー育成に携わる。日本の人事部「HRアワード2013」教育・研修部門 最優秀賞。

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