メンバー一人ひとりは優秀なのに、チームとしては噛み合わない。数字はいまのところ出ているけれど、この先どうなるのか不安がある。リモートで働くケースが増えたこともあり、そもそもチームとして機能しているのか分からない。こうした相談は、規模や業種を問わず増えています。
原因は、メンバー個人の能力ではありません。チームビルディングの順番にあります。多くの組織は「まず仲良くなる」から入りますが、成果が出るチームは目的と目標の共有から始まります。仲の良さは出発点ではなく、結果としてついてくるものです。この記事では、起業から26年にわたり国内外の組織に関わってきた森田英一が解説した、チームビルディングの7つのステップを整理します。
なぜ優秀な人を集めてもチームが機能しないのか
チームビルディングで最も多い誤解が、順番の誤解です。まず仲良くなり、仲が良くなれば信頼が生まれ、信頼があれば成果が出る。この発想があるから、チームワークを高めようとすると飲み会の企画になります。
飲み会そのものが悪いわけではありません。まったくやらないよりは、やったほうがいい面もあります。ただし、チームビルディングの本質から見ると遠回りで、いちばん大事なことに手がついていない状態です。
実際、このプロセスでは弊害も起こります。関係は良くなったのに成果が出ないチームになる。あるいは、関係が良くなったからこそ「あの人に嫌われたくない」と考え、言うべきことが言いにくくなる。どちらもよく見る現象です。
さらに、いまは飲み会を呼びかけても、小さい子どもがいる、お酒が飲めないといった事情で集まりにくくなっています。前提が変わった以上、同じ手法だけに頼るのは無理があります。
そしてもう一つの根本的な問題が、目的と目標の不在です。目的と目標がないのはチームではなくグループです。ただ集まって楽しいだけならそれで構いませんが、会社でチームを組んでいる以上、必ず目的と目標があるはずです。
チームビルディングの正しい順番
成果が出るチームには、たどっている順番があります。目的と目標の共有から始まり、一緒に動き、小さな成果が出る。そこで「この人たちと仕事をするとうまくいく」「この人はこう動くのか」という実感が生まれ、信頼が育ちます。その先に結果が出て、本当の意味で仲良くなります。
| 段階 | 誤解されている順番 | 成果が出る順番 |
|---|---|---|
| 1 | 飲み会・交流で仲良くなる | 目的と目標を共有する |
| 2 | 仲が良いので信頼が生まれる | 一緒に動き、小さな成果を出す |
| 3 | 信頼があるので成果が出る(はず) | 実際の仕事ぶりから信頼が生まれる |
| 4 | 成果は出るかどうか分からない | 結果が出て、本当の意味で仲良くなる |
交流から入ろうとすると、ミスリードが起きます。「仕事の同僚とプライベートの話はしたくない」という人もいるからです。その人にとって、交流の場は負担にしかなりません。
交流を否定しているのではありません。交流すればすべてが解決するわけではない、という点を理解しておくことが大事です。まずは「こういう場を最初に作るものだ」「飲み会をやればいい」という前提を一度脇に置き、ステップで考えてみてください。
この順番をたどったチームは、最終的に仲良くなります。ただしそれは飲み会で作った表面的な仲の良さではなく、戦友のような信頼です。言いにくいことも言えて、対立しても関係が崩れないチームになります。
チームが本音を失う3つの前提
1つ目が、対立の扱い方が分からないことです。本気の人が集まれば意見はぶつかります。ところが、ぶつかったときにどうすればいいかが分からないため、日本では対立を避ける方向に進みがちです。
その結果、本音が出なくなります。本音を言うと損をする、もしくは面倒なことになるからやめておこう、という空気が生まれます。この状態のチームは、表面上は穏やかでも判断を誤りやすくなります。
2つ目が、同質性で一体感を作ろうとすることです。同じTシャツを着れば一体感は出ますし、同じ価値観、同じやり方、同じ空気感は短期的には心地よいものです。しかし弱点が2つあります。異質な人が排除されやすいこと、そして新しい視点やアイデアが出にくいことです。
3つ目が、初期設定の強さです。メンバーはチームに入った瞬間、リーダーの振る舞いから「この人は全部決めたい人なのか」「役割を振って任せてくれる人なのか」を読み取ります。ここで決まった設定は、後から変えようとすると骨が折れます。
チームビルディング7つのステップ
| ステップ | やること | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | 何のためのチームかを確定する | 立ち戻れる共通認識を作る |
| 2 | 役割を明確にし、隙間を設計する | 責任感を生み、抜け漏れを防ぐ |
| 3 | 判断基準を渡し、決められる範囲を作る | 指示待ちとボトルネックを防ぐ |
| 4 | 対立の使い方を事前に決めておく | 本音が出る場にする |
| 5 | 小さく早く、一緒に成果を出す | 信頼と自信を積み上げる |
| 6 | メンバーを生かす前提に立つ | 違いを強みに変える |
| 7 | 志を宿す | 仕組みに意味を注入する |
ステップ1 何のためのチームかを最初に確定する
最初にやるべきことは、飲み会でもチーム名を決めることでもありません。このチームは何のために存在し、何を目指すのかという目的と目標を明確にすることです。
ここがないチームは崩れていきます。「お金がもらえればいい」「言われたことをやります」「友達を作るために働いています」と、前提がバラバラのまま動くことになるからです。
目的と目標を揃えておくと、ぶつかったときに「僕らはこれを達成するために集まったチームだよね」と立ち戻れます。この立ち戻る場所があるかどうかが、チームとグループの分かれ目です。
目的はバクっとしたもので構いません。目標は明確なものにします。目的は追い続けるもの、目標は達成するものという違いがあります。「これならみんなが一丸となれる」と思える言葉にしてください。
ステップ2 役割を明確にし、同時に隙間を設計する
役割を明確にすること自体は、欧米のジョブ型でも言われます。ただし欧米型には「これは私の仕事ではないのでやりません」となり、想定外の仕事を誰も拾わないという落とし穴があります。この誰の担当でもない領域が隙間です。
日本企業は逆に、役割を曖昧にして「みんなでやろう」となりがちです。すると「あれ誰がやる?」となったときに、いつも同じ人が拾うことになります。任せておけばいい、あの人がやってくれる、という空気が生まれ、頑張らない人が出てきます。
だからこそ、目的と目標に向けて「あなたはこの役割」と決めておきます。役割が与えられると責任感が湧き、頑張ろうという気持ちにつながります。
そのうえで、隙間を先に設計します。この領域で想定外のことが起きたら誰がカバーするのかを最初に定義しておくと、後で揉めにくくなります。ただし「あなたは何でも拾ってね」と1人に寄せると破綻するため、無理のない形で分けておくことが大事です。
ステップ3 判断基準を渡し、1人で決められる範囲を作る
多くのリーダーが飛ばしてしまうのがこのステップです。「任せるよ」とだけ言って任せると、メンバーが想定外のことをやってしまい、「それは違う」と言われて「任せてもらったのでは」となります。
その面倒を避けようとして、リーダーが全部決める形にすると、今度は判断が1か所に集中します。これがハブアンドスポーク型です。リーダーがボトルネックになり、メンバーはどんどん指示待ちになっていきます。
解決策は、任せることと判断基準をセットで渡すことです。「困ったら相談して」では、リーダーが考えている範囲とメンバーが受け取る範囲がずれます。たとえば5,000円以内なら自分で判断してよい、それを超えるなら相談する、といった線を引きます。
基準が明確になると、メンバーは「ここまでは決めていい」「この判断軸なら後から詰められない」と安心できます。これを少しずつ重ねると、自分で判断することへの自信が生まれ、判断力そのものが育ちます。
ここで決まるのがメンバーの初期設定です。全部相談しなければいけないチームなのか、どんどん任せてくれるチームなのか。最初に「うちのチームはこうやる」と決め、小ぶりな範囲に判断基準を添えて渡し、成功体験を積んでもらう形が有効です。
ステップ4 対立の使い方を、対立が起きる前に決めておく
対立が起きてからルールを作るのでは間に合いません。平和なうちに決めておきます。まず明確にすべきは、人格への攻撃と意見の対立は別だということです。
誰かの意見に「違うのではないか」と言うのは、人格否定ではありません。より良い建設的な議論をしようとしているだけで、その人への攻撃でも否定でもない。これを共通認識にしておきます。
そのうえで、反対意見を出す役を作ります。人は役割を決められると意見を言いやすくなります。「この会議の反対意見役はあなた」「次の会議は別の人」「2人ずつ担当」といった形にすれば、気兼ねなく言えます。
もう一つ有効なのが、質問責任というルールです。議論の途中で疑問があるとき、モヤモヤが残っているときは、質問しなければならないと決めておきます。
これは後出しを防ぐためです。決まった後に「あの時はこう思っていた」と言い出すのはルール違反にします。決まる前に反対や疑問を言う責任があり、決まった後は全員で力を尽くす。この形にすると、後から蒸し返して対立が拗れる事態を減らせます。
ステップ5 小さく早く、一緒に成果を出す
チームで信頼関係を作るいちばんの方法は成功体験です。「このチームでこんな成果が出た」という、一緒に何かを成し遂げた経験がお互いの信頼を生みます。
立ち上げ期にやるべきは、大きな目標を掲げつつ、小さくてもできるだけ早く成果が出ることを選び、一緒にやり切って達成感を味わうことです。
これには3つの効果があります。1つ目は、メンバー一人ひとりが「自分たちはできる」という自己認識を持てることです。2つ目は、本気で動く中でお互いの動き方、強み、弱みが見えてくることです。実際に成果を出そうと一生懸命にならないと、その人の強みは見えてきません。
3つ目は、約束をきちんと守る人かどうかが仕事を通して見えることです。ここで信頼が生まれます。飲み会で得た親密感とは別物で、ただ雑談している仲間と、一緒に何かを成し遂げた仲間はまったく違います。小さな信頼を積み上げる場を、あらかじめ設計してください。
ステップ6 メンバーを生かす前提に立つ
一体感を同質性から作ろうとすると、個性が生かされにくくなります。異質な人が排除されやすく、新しい視点やアイデアも出にくくなり、変化に対応できない、判断を誤っても気づけないという状態になりがちです。
強いチームは違いを前提にします。性格も強みも違う。ただし「この目的のために集まった」という共通点だけは譲らない。違うからこそ一緒にやる意味がある、という立て付けです。
一方で、個性の異なる人をまとめるのはリーダーにとって手間がかかります。だからこそ、強みを生かした仕事の配分や役割分担が重要になります。
そのためには、メンバーの強み、苦手分野、やりたいことを把握しておく必要があります。1on1のような場を持つことが、ここで効いてきます。
ステップ7 最後に志を宿す
ステップ6までで、役割、判断基準、対立を乗り越える仕組み、小さな成果と、仕組みは整います。しかし仕組みだけでは「役割分担されたからこれをやればいいのでしょう」という状態になりがちです。
ここに思いを注入します。この目的に向けてあなたは何をしたいのか、このチームを通してやりたいことは何か。個人の思いを聞き、それをチームの目的とつなげていきます。
そしてリーダー自身が志を語ります。自分はこんな夢を持っている、このチームでこれを成し遂げたい。魂の宿った言葉を語ることで、メンバー一人ひとりの中にこのチームでやる意味が芽生えます。
意味が生まれると、「やらなければいけないからやる」が「自分がやりたいからやる」に変わります。仕組みを作ったら終わりではなく、そこに魂を入れるところまでがチームビルディングです。
現場での打ち手
すでに動いているチームに、後からルールを入れる
初期設定の段階でやるのがいちばん楽ですが、途中からでも導入できます。何も起きていないのに急に「今日からこのルールです」と言われると納得しにくいため、問題が起きたタイミングを使います。
「人数が増えていろいろな意見があると聞いている。スムーズに進めるために、みんなの意見が場に出て、ガチで議論して決めて、後からグチグチ言わない形にしたい」と背景から説明し、納得してもらう形にします。
反対意見役と質問責任で、意見が出る場を作る
意見の対立がずっと起きないまま来たチームでは、反対意見を言うこと自体に大きな勇気が必要になります。早いうちに、意見がぶつかる経験をしておくことが大事です。
反対意見役を持ち回りにし、質問責任をルール化する。この2つを早い段階で入れておくと、意見が言いやすい雰囲気が定着します。
1on1で個性・強み・やりたいことを把握する
違いを生かす前提に立つには、リーダーがメンバー一人ひとりの個性を把握している必要があります。強み、苦手分野、やりたいことを聞く場として1on1を使い、役割分担に反映させます。
ワークショップで「このチームでの自分の意味」を共有する
プロジェクトチームを立ち上げるときは、このチームに自分が入った意味、このチームで達成したいことをポストイットに書いてシェアする方法が有効です。
「この人はこういう思いで参加しているのか」とお互いに知り合えます。出発点だけでなく、途中の節目でも同じ対話を挟むと、志が薄れにくくなります。
「頑張れ」だけで終わらせない
部下のやる気が上がらないという相談の背景には、ここまでの前提が抜けているケースがよくあります。何のためのチームか、役割分担はどうなっているか、隙間は誰が拾うのかが決まらないまま、任せて放置されている状態です。
その状態で「頑張れ」とだけ言われても動けません。声をかけること自体は悪くありませんが、効果がある人とない人がいます。言葉の前に仕組みを作ることが、リーダーの仕事です。
明日から着手する順番
- このチームは何のために存在するのかという目的を、バクっとした言葉で書き出す。
- 目的にひもづく目標を、達成したかどうかが分かる明確な形にする。
- メンバー一人ひとりの役割を決め、目的とのつながりを伝える。
- 誰の担当でもない隙間を洗い出し、誰がカバーするかを事前に決める。
- 任せる範囲と判断基準をセットで渡す。金額や条件など、線を数字で示す。
- 人格攻撃と意見の対立を分けること、質問責任、後出し禁止をチームのルールにする。
- 次の会議から反対意見役を決め、持ち回りにする。
- 早く成果が出る小さなテーマを1つ選び、チームでやり切る。
- 1on1でメンバーの強み・苦手・やりたいことを把握し、役割に反映する。
- リーダー自身の志を語り、メンバーの思いとチームの目的をつなげる。
よくある質問
チームビルディングは何から始めるべきですか?
目的と目標の共有から始めます。7つのステップの1番目であり、ここがないチームは崩れていきます。飲み会やチーム名決めは出発点になりません。
飲み会でチームワークは良くなりますか?
やらないよりは良いですが、本質からは遠回りです。関係は良くなったのに成果が出ない、嫌われたくないので言いにくくなる、という弊害も起こります。
目的と目標はどう違いますか?
目的は追い続けるもの、目標は達成するものです。目的はバクっとした表現で構いませんが、目標は明確な形にします。
チームとグループの違いは何ですか?
目的と目標があるかどうかです。目的と目標がないのはグループで、ただ集まって楽しいだけの状態になります。
役割を明確にすると何が変わりますか?
責任感が湧き、頑張ろうという気持ちが生まれます。役割が曖昧だと、いつも同じ人が拾い、頑張らない人が出てきます。
チームビルディングでいう「隙間」とは何ですか?
誰の担当でもない想定外の仕事のことです。役割だけを決めると、この隙間を誰も拾わない状態が生まれます。
隙間は特定の1人に任せてよいですか?
避けてください。1人に全部やらせると破綻します。領域ごとに誰がカバーするかを、無理のない形で分けて定義します。
メンバーに任せるときに必要なものは何ですか?
判断基準です。基準なしに任せると想定外の動きが起き、「任せてもらったのでは」というすれ違いにつながります。
リーダーが全部決めると何が起きますか?
リーダーがボトルネックになります。判断が1か所に集中するハブアンドスポーク型になり、メンバーは指示待ちになっていきます。
判断基準はどう伝えればよいですか?
線を具体的に示します。たとえば5,000円以内は自分で判断、それを超えたら相談、というように条件で区切ると安心して動けます。
メンバーの初期設定はなぜ重要ですか?
最初に読み取った設定が定着するためです。後から変えようとすると、どこまでやってよいのか分からず恐る恐るになります。
対立はチームに必要ですか?
必要です。本気の人が集まればぶつかります。扱い方が分からず対立を避けると、本音が出ないチームになります。
反対意見が出ないチームはどうすればよいですか?
反対意見を出す役を決めます。人は役割が決まると意見を言いやすくなるため、会議ごとに1〜2人を持ち回りで担当させます。
「質問責任」とは何ですか?
疑問やモヤモヤがあるときは質問しなければならない、というルールです。決まる前に出し切ることで、後からの蒸し返しを防げます。
決定後の後出しはなぜ問題ですか?
チームが崩れる原因になるためです。決まった後は全員で力を尽くし、言いたいことは決まる前に言う。これをルールにします。
なぜ小さな成果を早く出すべきですか?
信頼が生まれるためです。効果は3つあり、自分たちはできるという自己認識、強みや弱みの把握、約束を守る人かの見極めが進みます。
同質性の高いチームの弱点は何ですか?
弱点は2つです。異質な人が排除されやすいことと、新しい視点やアイデアが出にくいことです。判断の誤りにも気づきにくくなります。
メンバーの個性はどう把握しますか?
1on1を活用します。強み、苦手分野、やりたいことを理解しておくと、強みを生かした仕事の配分や役割分担ができます。
リーダーが志を語る意味は何ですか?
メンバーに意味が芽生えるためです。やらなければいけないからやる状態から、自分がやりたいからやる状態へ変わります。
既存のチームに後からルールを導入できますか?
できます。ただし変えるのは骨が折れるため、問題が起きたタイミングで背景を説明し、納得してもらう形が有効です。
まとめ
- チームが機能しない原因は個人の能力ではなく順番です。目的と目標の共有が出発点で、仲の良さは結果としてついてきます。
- 役割を決めるだけでは足りません。誰の担当でもない隙間を、事前に誰が拾うか決めておきます。
- 任せるときは判断基準とセットにします。範囲を数字などで示すと、判断力が育ちます。
- 対立のルールは平和なうちに決めます。人格攻撃と意見の対立を分け、反対意見役と質問責任を置きます。
- 7つのステップを終えたチームは、対立しても壊れず、耳の痛いことを言い合えます。これは心理的安全性が高い状態そのものです。
まずは「このチームは何のために存在するのか」を1行で書き出し、次のミーティングでメンバーと揃えるところから始めてください。
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